○高校二年一組の教室(歴史の授業中・昼過ぎ)

ごく一般的な現代が舞台。高校は公立の柳高校。
メインキャラクターは制服姿(ブレザー)の白波真純と桜川朧夜。制服はキャラメル色のブレザーに、チェックのスカートorズボンのイメージ。

白波(しらなみ)真純(ますみ):テラコッタ色のミディアムヘア。二つ結びのゆるふわお下げ。可愛らしい顔立ち。亜麻色の瞳。
桜川(おうかわ)朧夜(ろうや):耳や目にかかる長さの亜麻色の髪。切れ長の目をした超絶イケメン。茶色の瞳。

真純は朧夜に片想い中。
しかし、今までペアワーク以外で話したことはない。

朧夜は一番後ろの窓側の席に座り、眠そうに窓の外を眺めている。

真純(今日も眠そうだなぁ……)
朧夜の隣の席に座る真純は、シャーペンを持ちながら朧夜のことをこっそり見つめる。

真純はちらりと、朧夜の手元のノートを覗き見る。
ノートは罫線が引かれてる様式で、何も書かれていない。

真純(やっぱり何も書いてない……)(なのに、テストではいつも高得点……)
居眠りする朧夜・白紙のノート・満点の解答用紙を想像し、(解せぬ……)というような顔を浮かべる真純。

♪キンコンカンコン
ここで授業終了のチャイムが鳴る。
この時、朧夜がふとこちらを向き、真純と朧夜の目が合う。
真純(……!!)
ドキリとする真純と無表情の朧夜。
すぐに朧夜の視線は逸らされる。

教師「今日はここまで。ちゃんと復習するんだぞー」
教壇に手をついて解散の合図をする教師。

教師:スーツのジャケット無し+腕捲りの、よくいる歴史教師のイメージ。

真純「やばっ」(朧夜くんのことを考えてたら、ノートをとるのを忘れてた……!)
焦る真純。この時点で、真純のノートは最初の数行しか埋まっていない。
真純は慌てて黒板に書いてある文字を書き写す。

そんな真純の耳に、朧夜と朧夜の前の席に座る男子・一晃の話し声が聞こえてくる。
一晃は椅子を引いて横向きに座り、朧夜の机に腕を置くイメージ。

相田(あいだ)一晃(かずき):朧夜の友達。黒髪爽やかイケメン。バスケ部。身長は朧夜と同じくらい。

真純は二人の会話に、こっそり聞き耳を立てる。

一晃「朧夜、さてはまた寝てただろ?」
ニヤニヤする一晃。
朧夜「今日は寝てない」
無表情で答える朧夜。
一晃「ホントかぁ?」
朧夜「うん」
眠たげな表情の朧夜と、陽気に笑う一晃の対比関係。

真純(朧夜くんって、笑ったりするのかな)(いつも無表情なんだよね……)
笑顔の朧夜を想像してみる真純。
キラキラアイドルスマイルの朧夜が思い浮かぶ。
真純(いやいや、こんな朧夜くんはもはや別人!)
真純は妄想をかき消すかように、ブンブンと頭を横に振る。

○学校からの帰り道・夕方

真純は親友の皐月と一緒に帰っていたが、途中で別れる。学生鞄を肩にかけている。

真宮(まみや)皐月(さつき):腰まである金髪サラサラストレートヘア。どちらかと言うと大人っぽい顔立ち。

皐月「真純、また明日!」
にかっと笑う皐月。
真純「うん、またね!」
二人は手を振って別れる。

その後、帰路を辿る真純は、通りがかった路上の隅で、なぜか倒れている朧夜を発見する。この時、朧夜は学生鞄を肩に掛けたまま。朧夜はうつ伏せ気味。

真純視点からは【同じ高校の制服を着ている男子が倒れている】ということしか分からず、まだ倒れているのが朧夜だとは気づいていない。
よくある通学路のイメージだが、周囲に他の人はいない。

真純(えっ何!? 事件!?)(柳高校の制服……)
ぎょっとする真純。
真純は警戒しながらも、声を掛けようと朧夜に近づく。
真純「あの……大丈夫ですか?」
おずおずと尋ねる真純。

そして、真純は倒れている男子の顔を覗き込み、朧夜であることに気がつく。

真純「えっ、朧夜くん!?」
驚愕する真純。
朧夜「うっ……」
苦しそうに眉をひそめて呻いく朧夜。
朧夜は近づいてきた真純に気がつき、閉じていた瞼を持ち上げる。
朧夜「誰……?」
真純「白波真純だよ……! 同じクラスの! 朧夜くん、どうしたの!?」
真純(あ、桜川くんじゃなくて、朧夜くんって呼んじゃった……!)(心の中だけにしてたのに……)
名字じゃなくて名前を呼んでしまって、(やっちゃった!)という顔をする真純。

朧夜「ああ、白波さん……」
合点がいったような朧夜。
すると、依然として苦しそうな朧夜が、真純に向かって手を伸ばしてくる。
真純(えっ……?)
真純は戸惑いつつもその手を掴む。
朧夜「ごめん……ちょっと家まで運んでくれない?」
無表情のまま真純を上目遣いに見上げる朧夜。
真純はドキリとする。

真純「家って……」
朧夜「アレ」
真純の後ろにある、西洋風の豪邸を指さす朧夜。
真純は朧夜の指を追って後ろを振り返り、その豪邸を見て驚く。

真純(えっ、ここ!?)(朧夜くんって、何者!?)
驚愕する真純。

朧夜「だめ……?」
乏しい表情ながら、あざとい朧夜。
朧夜は首を傾げて、真純にお願いする。
真純(うっ……かわいい……!)
朧夜のあざとさがグッとくる真純。
可愛さを噛み締めるような表情。
真純「えっと……あの家まで支えればいいんだよね……?」
朧夜「うん、お願い」
頷く朧夜。依然として、冷や汗を浮かべて苦しそう。

真純はぐいっと手を引っ張って、朧夜を起こしてあげ、朧夜の腕を肩に回す。
朧夜は目を瞑り、だらんと真純の方へもたれかかってくる。
しかし、朧夜自身も踏ん張ってくれているため、そこまで重くはない。
二人の身長差は20cm程のイメージ。

真純(朧夜くんが近い……っ!)(心臓が持たないよ〜!)
ドキドキして顔が紅くなる真純。

そして、真純はなんとか、朧夜を支えながら豪邸の玄関前まで来る。

真純「えっと……」
立ち尽くす真純。
朧夜「鍵空いてるから、そのまま入って」
朧夜が呟く。
真純「う、うん」
頷きつつも、(どうしよう……)という感じの真純。

真純(入っちゃっていいのかな……)(でも、緊急事態だし……)
朧夜と豪勢な扉を見比べて葛藤する真純。

ガチャ
結局、真澄は言われるがまま、朧夜を支えた状態でドアを開く。

○朧夜の家
玄関から見える廊下にはおしゃれな絵画や薔薇の花瓶が飾られている。お金持ちの家のイメージ。
靴箱の横に、不思議な小型冷蔵庫が置かれてある。

真純「お邪魔します……」
豪邸に入り、朧夜を玄関に座らせる真純。
朧夜「白波さん、ありがとう」
疲れた様子の朧夜。この時はまだ乏しい表情。
真純は手持ち無沙汰に立ったまま。

朧夜は真純に礼を言った後、のそのそと玄関に置かれた冷蔵庫に手を伸ばす。

真純「えっ」(なんでこんなところに冷蔵庫が……!?)
驚く真純。

朧夜は冷蔵庫から赤いジュース(?)が入ったペットボトルを取り出して、蓋を開けてごくごくと飲む。半分くらい減る。

真純(トマトジュース!?)(い、一体何を……?)
朧夜の様子を不思議そうに見守る真純。
朧夜「あ〜、生き返った……」
朧夜は赤いジュース(?)を飲んだ瞬間、一気に元気になって立ち上がり、ぐっと背伸びをする。
そして、朧夜は真純の方を振り向く。
朧夜「白波さんのおかげで助かったよ」
そう言って綺麗に微笑む朧夜。
今までの朧夜の表情とは全然違うギャップがある。

真純(わ、笑った……!!)(初めて見た……こんな顔できるんだ)
朧夜の笑顔にキュンとする真純。
ズキューンと恋の矢が突き刺さるイメージ。
真純「ど、どういたしまして……」
ドキドキしすぎて、たどたどしくなる真純。

真純「朧夜くん、それは……?」
真純は朧夜が持つペットボトルを指さして、恐る恐る尋ねる。
朧夜「あー、食料……?」
自分で言いながら疑問形の朧夜。
先程までとは違い、無表情じゃなくなって、ころころと表情が変わる。
真純「食料って……」
朧夜「俺、吸血鬼だから」
朧夜はそう言って妖艶に笑い、べーっと舌を出す。その舌と、少しだけ除く牙(八重歯?)に赤い液体が絡みついている。目も紅く光る。

その様子を見てドキリとする真純だが、それ以上に朧夜が放った言葉に対して驚きを見せる。
真純「吸血鬼……!?」
真純(てことは、この赤いジュースって血……!?)(い、いやいや、そんなわけ……)
突拍子もないことを告げられて、頭がぐるぐる混乱する真純。

そんな真純をよそに、朧夜は微笑みながら、固まる真純の手を優しく掴む。
自然と手を繋ぐような形。
そしてグイッと引っ張る。ぐっと距離が縮まる。
朧夜「白波さん、お礼させて」
真剣な顔の朧夜。
真純「えっ?」
ドキドキしながら驚く真純。
朧夜「もしかして、用事ある?」
首を傾げる朧夜。
真純「用事はない、けど……」(ど、どうしよう)
手を繋がれて、ドキドキして上手く話せない真純。
朧夜「じゃあ、決まりね」
嬉しそうに微笑む朧夜。
結局、真純は朧夜に流されて、靴を脱いで家の中に上がってしまう。
朧夜も適切なタイミングで靴を脱ぐ。
朧夜はそんな真純の手を引いて豪邸の廊下を歩いていく。
真純(朧夜くん、なんかいつもと雰囲気が……)
いつもと雰囲気が違う朧夜にドキドキが止まらない真純。
真純は繋いだ手と朧夜の背中を見て、意識してしまい俯く。

真純(どうしよう!)(皐月、助けて〜〜!)
急な展開に、心の中で親友に助けを求める真純。
キランとウインクしながら頼もしげにグッとポーズをする皐月が思い浮かぶ。


1話終了