笑顔の眩しい腹黒王子は、固い扉を蹴り破る

「ありがとうございます、ローレンス殿下。私への嫌がらせのせいで……殿下は巻き込まれただけなのに」
「いや……俺は感謝してるよ。ここにモニカと二人きり閉じ込めてくれた令嬢達にね」
「ん?」
「責任持って、君を妻として迎え入れよう」
「はい!?」

 意味がわからない。

 混乱するモニカの頭に、二人きりの物置小屋に、フクロウの鳴き声が虚しくこだまする。
 
「……ええと、ローレンス殿下。どういうことですか」
「どういうことって、そのままの意味だよ」
「私を妻に?」
「そう」
「ご冗談を……」

 そんな、わけのわからない話は冗談にしたかった。
 けれどローレンスの低い声が物語っている。
 これは、冗談じゃないらしい。
 
「冗談じゃ無い」
「そんな」
「俺はずっと、君のことが好きだった」

 耐えきれずに顔を上げると、切なげな顔をしたローレンスが、懇願するように見下ろしている。
 
「王子の俺は、嫌い?」
 
(う、うそでしょう……?)
 モニカには返事が出来なかった。
 たとえローレンスを、まだ好きであったとしても。