「じゃあ、そろそろ荷解きしないといけないから部屋戻るね」
「うん、わざわざありがとう」
「こちらこそ。あ、柚原さんの隣も誰か住んでる?」
「ううん、今はまだ空いてるの。募集中だって言ってたーーーっわ、」
その時、突然びゅんと風が吹いて。
少しつめたい風が、私の頬を突くように撫でた。
下ろしていた髪が顔の前に広がって、視界が遮断される。目をつむった。
やっと風がやんで、ゆっくりとまぶたを上げた先には、
「……っ、」
普段とはまるで違う、別人とも思えるほどの刺すような冷たい瞳。
え……?
驚いて目を見開く。ぱちりと、瞬きをひとつ。
次の瞬間には、それが夢のようになくなっていた。
気のせい、かな。
「柚原さん?どうしたの?」
「あ……ううん、なんでもない」
「……そう?じゃあこれからよろしくね、……お隣さん」
にこ、といつも通りの笑顔。それが少し妖しく見えたのは、たぶん気のせいじゃない。
……ていうか、緊急事態。
「え……?お隣さん?」
どうやら学校の王子様様が、私の隣の部屋に越してきたらしい。



