◯宮本家・リビングダイニング(朝)

美香「もう、朝から大声出さないでよ~」

美香が部屋に入って来る。

宮本「ま、まさか。一晩中……⁉︎」
と、震える。

美香、えまと陽斗を見て察する。

美香「はい落ち着いてパパ。おはよ」
と、宮本をダイニングのテーブルに連れて行く。

美香「(小声で)宥めておくから大丈夫」
と、えまと陽斗に向かってウインクする。

えまと陽斗、頷いてリビングを出る。

宮本「ちょっと待て陽斗! これは社長として、いや父親としてちゃんと話を聞かないと!」

美香「話なら私が後で聞いておくから」

宮本「コラ待て陽斗! えまも! 逃げるな!」

美香「もういいから。あんまり言うとえまに嫌われるわよ」

宮本「でも……!」

美香、ニコニコしながら朝食の準備をする。


○同・廊下(朝)

えまと陽斗、互いの部屋の前で立ち止まる。
陽斗、えまの方を向いて、

陽斗「あのさ。昨日のことだけど……」

えま「あのっ……なんかごめんなさい!」

えま、勢いよく部屋の中に入りドアをバタンと閉める。
陽斗、唖然として立ち尽くす。


○同・えまの部屋(朝)

えま、ドアを閉めて呼吸を整える。

えま「陽斗くんの頭が肩に乗ってただけなのに! どうしてあんな体勢に⁉︎ 一体何が起こったの⁉︎」

えま、頭を抱える。


○同・陽斗の部屋(朝)

陽斗、ゆっくりとドアを閉める。

陽斗「あの反応。絶対俺がなんかやらかしたんだよな⁉︎ もしかして、あれ……」


○(陽斗の回想)同・リビングダイニング(深夜)

陽斗、ソファで目を覚ます。

陽斗「ん……」

えまの頭が膝に乗っている。
陽斗、えまをソファに寝かせ、自分もそのまま横になる。
(陽斗の回想終了)


○同・陽斗の部屋(朝)

陽斗「まじか……」
と、頭を抱えながらしゃがみ込む。


○同・キッチン(朝)

美香、ニコニコしながら朝食の準備をする。


○(美香の回想)同・廊下~リビングダイニング(深夜)

美香、リビングの電気に気づく。

美香「まだ起きてたのー?」
と、リビングに入る。

えまと陽斗がソファで向かい合って眠っている。
美香、にっこり笑って毛布を2人にかける。
(美香の回想)


○同・リビング(朝)

えまと陽斗と類がテーブルを囲む。
類、えまと陽斗を怪しみながら食べる。

美香「はい、これも良かったら食べてね」

美香、フルーツを持って来て座る。

類「そういえば、田中くん昨日の夜は大丈夫だったわけ? 随分酔ってたって聞いたけど」

陽斗、突然むせて咳き込む。
類、目を細めて見る。

美香「あら、大丈夫?」

えま、陽斗に水の入ったコップを差し出す。
陽斗、コップを受け取る時にえまと手が触れる。

えま「っ!」

えま、驚いてコップから手を離しテーブルに水がこぼれる。

えま「あっ! ごめんなさい!」

美香「あらやだ。何してるのー! 陽斗くんかかってない?」

美香、陽斗にティッシュを渡す。

陽斗「大丈夫です。俺がちゃんと受け取らなかったので。すみません」

陽斗、ティッシュでテーブルや食器の水分を拭きとる。

美香「待ってね、今タオル持ってくるから」
と、立ち上がる。

えまも濡れた食器をティッシュで拭く。
類、えまをじっと見つめる。

美香「ちょっと! 類も手伝いなさい」

類「おかしい」

美香「なにが?」

類「この2人。さっきから怪しすぎる。昨日、なんかあったの? 母さん何か知ってる?」

えまと陽斗、ドキッとする。

えま「な、何言っちゃってんのお兄ちゃん」

陽斗「そうですよ。アハハ……」

美香「私、夜中に起きちゃったけど、みんな寝てたわよ?」

えまと陽斗「えぇッ⁉︎」
と、美香の方を見る。

美香「ん? どうかした?」
と、にっこり笑う。

えま「いや別に……」

陽斗「なんでもないです……」

類、さらに目を細めて怪しむ。
美香、楽しそうにタオルを取りに行く。


○同・玄関(朝)

陽斗が靴を履いていると類がやって来る。

陽斗「あ、すいません」
と、場所を空けようとする。

類、ニコニコしながら陽斗に顔を近づける。
陽斗、顔を引きつらせながら後ろにのけ反る。

陽斗「あの……」

類「一応聞くけどさ?」

陽斗「は、はい」

類「酔った勢いで、えまのこと押し倒したり~とか。田中くんに限ってまさかそんなことしてないよねぇ?」

陽斗「もちろんです! そんな押し倒すとかはしてないです!」

類「押し倒すとかはぁ⁉︎ なに、それ以外は心当たりあるんだ?」

陽斗「いや、違いますよ! そんな、まさかね……あははは」

類「そうだよね? あははは。ごめんね疑っちゃって」

2人、笑って誤魔化す。

類「くれぐれも頼むよー田中くん」

類、満面の笑顔て陽斗の肩をポンポンとして家を出る。

陽斗「はい……」

陽斗、困った顔で閉まったドアに向って呟く。


○テレビ局・楽屋

くつろぐユニクラウンのメンバー。
陽斗、鏡を見ながら髪を確認する。
他のメンバーはスマホを見ている。

悠真「そういえばはるピーこの前大丈夫だった? 珍しく酔ってたけど」

陽斗、鏡越しに悠真を見る。

陽斗「あぁ……うん」

翼「ん~?」
と、陽斗をじっと見る。

翼「なーんか様子がおかしい」

翼、陽斗の後ろに立ってうち肘固めをする。

翼「秘密はなしだぞー!」

凛太郎「はけはけー!」
と、ヤジを飛ばす。

陽斗「待ってムリムリギブっ!」
と、翼の腕を叩く。

翼、腕を緩める。
陽斗、呼吸を整える。
メンバーが集まって陽斗をじっと見る。

陽斗「……みんなが帰った後もソファで死んでたんだけど。気づいたら朝になってて、えまと一緒に寝てた」

柊也「え」

悠真「それって」

翼「絶対アウトなやつぅー! おまわりさーん!」
と、叫ぶ。

柊也「ほんとに警備の人くるからやめろ」
と、笑いながら翼を叩く。

凛太郎「待って。その前に、はるピーってえまちゃんのこと呼び捨てにしてたっけ?」

悠真「この間も呼び捨てだったよ」

凛太郎「マジか!」

柊也「陽斗、本当に記憶ない感じ?」

陽斗「夜中目が覚めたらえまの頭が俺の膝にあって。寝心地悪いだろうなと思ってソファに寝かせて……」

悠真「それで?」

陽斗「俺も、そのまま横になった……」

翼「全部覚えてんじゃねーか!」

陽斗「いや、夢かと思ったんだって!」

翼「そんなロマンチスト装うったってそうはいかない。田舎の母ちゃん泣いてんぞ」
と、陽斗の肩をトントンとする。

柊也「でもそのまま朝まで寝てただけでしょ?」

凛太郎「そうだね」

陽斗「だと思うけど……」

悠真「なんだ。良かった良かった。ただの添い寝だ」

陽斗「まぁ、うん……」

メンバー、顔を見合わせてニヤニヤする。
楽屋の音をノックする音。

翼「はーい」

美玲の声「失礼します」

山口美玲(28)が入って来る。

美玲「山口美玲です。今日はよろしくお願いします」

柊也「こちらこそ、よろしくお願いします」

美玲、陽斗の方を見てニコッと笑う。

美玲「失礼しました」
と、ドアを閉める。

翼「陽斗の方しか見てなかったな」

凛太郎「山口さんってはるピーとドラマ共演したんだっけ?」

悠真「そうそう。まだ俺らはデビュー前で主人公カップルたちの学生時代役」

柊也「似てるって話題だったよな」

翼「未だに2人が絶対付き合ってるってネットで考察されてんの知ってる?」

陽斗「俺、彼女の連絡先も知らないんだけどね」

悠真「聞かれなかったの? 聞かれたでしょ?」

陽斗「どうだっけな……」

翼「(笑いながら)お前マジさ」

陽斗「ん?」

柊也「いーんだよ。これが陽斗の良さだから」

陽斗、わけがわからないという顔。


○同・廊下

陽斗、トイレから出てくると美玲が立っている。

美玲「あ! 陽斗くん!」

陽斗「……お疲れ様です」

美玲「お疲れ様―! ドラマ見てるよ。忙しそうだね」

陽斗「……いえ、そんなですよ」

美玲「もうすぐライブでしょ? ユニクラウンはチケット全然取れないって噂だよ。ねぇ、もし良かったら関係者席……」

大和の声「あ、陽斗――!」

瀬名大和(26)の声で美玲の声がかき消され、大和が手を振りながらやって来る。

大和「山口さんお久しぶりです!」

美玲「久しぶり」

大和「陽斗こんなとこいて大丈夫かよ。杉野が探してたぞ」

陽斗「マジか。すいません山口さん。これから移動あって」

美玲「ごめんね引き止めちゃって。頑張ってね!」

大和「割り込んじゃってすみません。コイツ連れて行きますね」

陽斗と大和、軽くお辞儀して歩いて行く。
美玲、2人の背中を見つめる。

×  ×  ×

大和、陽斗の肩に手を回して歩く。

陽斗「大和なんでここに?」

大和「俺らこれからレギュラーの収録。んで、局の中散歩してたらなんか困ってる陽斗見つけたから」

大和、ニカッと笑う。  
2人、エレベーターに乗り込む。


○同・エレベーター内

陽斗と大和、壁に寄りかかって会話。

陽斗「大和って山口さんと仲いいの?」

大和「いや全然? 前に1回番組一緒になったくらい」

陽斗「それであんなに……やっぱ大和はすごいな」

大和「お前がぎこちなさすぎ。ドラマ一緒にやってたじゃん。ほんと、ぐいぐいこられるの苦手だよな」

陽斗「人見知りなんだよ……」

陽斗、恥ずかしそうに言う。
エレベーターが止まって扉が開く。

大和「じゃあ俺こっちだから」

大和、陽斗と反対方向を指す。

陽斗「うん。助かった」

大和「ライブ楽しみにしてる。みんなで見に行くから! 無理しすぎんなよ」

陽斗「うん! ありがと!」

陽斗と大和、拳を合わせて別れる。


○高校・食堂内

生徒で溢れている食堂内。
えまと桃香、お盆を持って列に並ぶ。

桃香「それで話したいことって? 何かあった?」

えま「それがね。私、陽斗くんと……」

桃香「陽斗くんと……? キスでもした?」

えま「違うよ!」

桃香「じゃあなに?」

えま「寝てた……」

桃香「えぇっ⁉︎」

桃香の声が食堂に響き渡り、食堂が静まりかえる。
えまと桃香、「すいません」と謝る。

桃香「え、一応聞くけど。寝てたってどっちの意味? ほら、スリープなのかそうじゃないのか、さ。そこ大事じゃん? 全然意味変わってくるから」

えま「スリープに決まってるじゃん! 一晩中添い寝してたの!」

桃香「だよね、良かったぁ。でもなんでそんなことになったの?」

えま「陽斗くんお酒飲んで酔ってて、最初はね私の肩に頭こうやって預けて寝てたの。それで私もいつの間にか寝ちゃったみたいで」

桃香「ふんふん」

えま「でも朝起きてみたら目の前に陽斗くんの顔があって、2人ともソファに横になってて、陽斗くんの手が私の腰にあって」

えま、ジェスチャーをする。
桃香、頷きながらラーメンを受け取る。

桃香「なるほどね。抱き枕まではいかないけど、でもそんな距離感で一晩中寝ちゃってたわけだ。しかもどうしてそうなったのか分からないと」

えま「そう! そうなの!」

えま、カレーを受け取って桃香と席に座る。

えま「私が大げさに考えすぎなのかなぁ」

桃香「でもこればっかりは田中さんに聞いてみるしかないよね」

えま「何があったか覚えてますかなんて聞けなくない⁉︎ こんな意識して引かれそう」

桃香「じゃあ何事もなかったように今まで通り過ごす?」

えま、口を動かしながら首を横に振る。

桃香「じゃあ、聞かないとね」

桃香、ラーメンを冷まして麺をすする。

えま、困った顔をする。


○同・教室

えま、ペン回しをしながら口をへの字にして窓の外を眺める。
教師、黒板に板書する。

教師「ここ重要だぞー。テストにも出すからなー」

クラス、ざわざわする。
えま、外を見続ける。


○ミラベル・店内(夜)

えま、難しい顔をしてテイクアウト用のコップを袋から出す。
勇輝、えまをチラチラ見る。

勇輝「なんでそんな難しい顔してんの?」

えま、作業の手を止める。

えま「あのさ。勇輝は私とこんな風にくっついて寝れる?」

えま、ジェスチャーをして見せる。

勇輝「はぁ? なんだよその質問」

えま「いいから! これが重要なの!」

勇輝「……いや。そもそも2人きりで同じ部屋で寝るっていうのが普通はないだろ。子供じゃないんだし、付き合ってるわけじゃないんだし」

えま「……そうだよね。しないよね普通。やっぱりあれは酔ってたからだよね」

えま、ブツブツ呟く。

勇輝「(変なやつ)」

勇輝も汚れた食器を食洗器に入れる。

勇輝「でも大人だったら違うのかもな。そんなの誰とでもできそう。俺はそうはなりたくないけど」

えま、手が止まる。

えま「……そうだよね」

えま、陽斗がよく座る席を見つめる。

えま「添い寝なんて普通か。大人だし、芸能人だし」
と、ボソッと呟いてため息をつく。

舞「2人ともありがとね! もう上がっちゃっていいよ」

舞、バックヤードから出てくる。

勇輝「はーい」

えま、時計を見て血相を変える。

えま「やばい! 今日の夜会、陽斗くんたち出るんだった!」

えま、エプロンを脱ぎながらバックヤードに行く。

舞「夜会? なんか危なそうだけど大丈夫かな」

勇輝「あー多分違います。テレビ番組の話です」

舞「あ~! はいはいえまの推しね」

×  ×  ×

えま「お疲れ様です! お先に失礼しまっす!」

えま、制服に着替えてバックヤードから声をかける。

舞「気を付けてね~」

えまがバタバタと走って行く音。
勇輝、フッと笑う。

勇輝「なんだ、元気じゃん」

舞、勇輝を横目で見る。

舞「なに、優しいじゃーん」

勇輝「まぁ、大事な同期なんで」


○宮本家・玄関(夜)

えま、バタバタと玄関に入って来る。

えま「ただいまー!」

カーリーが走って来る。
えま、靴を脱ぐ。

えま「ごめんカーリー! 急がなきゃいけないから! ほら、リビング行くよ!」

えま、カーリーとリビングへ走って行く。


○同・リビングダイニング(夜)

えま、ダイニングに滑りこんでテレビをつける。

えま「良かったぁ! セーーフ!」

えま、ソファに座る。

えま「カーリーおいで!」

えま、カーリーを抱き上げる。
テレビ番組が始まる。
番組MCの2人と陽斗、翼が座って歓談。

有吉「田中くんははじめましてよね?」

陽斗「そうですね。僕はずっとテレビで見させていただいてたのであんまりはじめましてな感じはしないんですけど」

櫻井「杉野くんはね、前回リーダーと来てくれてね」

翼「はい! 色々話させていただきまして!」

有吉「(ニヤニヤしながら)いやぁ、田中くん来てくれて、正直やっと本物のユニクラウンに会えたって感じするね」

陽斗「アハハハ!」
と、手を叩いて笑う

翼「なんすかそれ! 本物とか偽物とかないんですよ! 俺もちゃんとユニクラウンなので!」

翼、立ち上がって反応する。

有吉「(笑いながら)あ、そうなの? ごめん、ベンチメンバーかと思ってさ」

翼「アイドルにベンチとかないですから! もう勘弁してくださいよ。でも、(カメラに向かって)ありがとうございます!」

櫻井「もうそういうとこがさ、バラエティ班なのよね」

有吉「そうそう」

えま「ふふ。翼くん面白い」
と、笑いながら見る。

画面に戻って、

櫻井「実は今日ちょっとスタッフから事前にこの話を聞いてほしいって言われてて」

有吉「なんの話?」

櫻井「なんと、恋愛トークをお願いしますって」

有吉「えぇっ⁉︎ 事務所的にそんなこと聞いちゃって大丈夫なの?」

有吉、スタッフの方に聞く。

櫻井「あ、マネージャーが丸ってしてる」

有吉「あ、いいんだ。まぁ田中くんのはさ、みんな興味あると思うけど、ベンチくんの恋愛観とか知りたい人いるのかな?」

翼「あの有吉さん。ベンチくんってあだ名にすんのやめてもらっていいっすか? 俺のばあちゃん見てるんすよ!」

有吉「(笑いながら)あ、そうなの。おばあちゃん、ごめんなさいね。お孫さんベンチで頑張ってますよー」

有吉、カメラに向かって手を振る。

櫻井「違う違う」

有吉「違うか」

翼「有吉さぁぁぁぁん!」

櫻井「多分雑誌とかでも散々聞かれてると思うけど。まずじゃあ田中くんの好きな異性のタイプは?」

陽斗「俺はあんまりコレっていうのはないんですよね」

有吉「例えばさ、可愛い系とか美人系とかは?」

陽斗「あーメイクが濃いのとかはちょっと苦手かもしれないです。あと香水がキツイとか」

櫻井「どっちかって言うと清楚な感じなのかな」

陽斗「ですかね。化粧が濃い人って、なんか強そうな感じがして、自分からいくのに勇気がいるというか……」

翼「こいつ人見知り激しいんですよ」

有吉「そうなの? 全然見えないけどね。でも自分からいきたいって思いはあるんだ」

陽斗「そうですね。そこは頑張ると思います」

櫻井「髪色とかは?」

有吉「細かいねぇ」

櫻井「僕じゃないんですよ。スタッフが!」

陽斗「(笑いながら)そうですね、綺麗な黒髪の人には惹かれます。これくらいの長さで、ちょっとウェーブかかってるような」

有吉「どうしよ。俺伸ばそうかな」

翼「なんで有吉さん田中のタイプ目指そうとしてるんすか!」

一同、笑う。

えま「陽斗くん黒髪好きなんだって」
と、カーリーを撫でながら話しかける。

画面に戻って、

有吉「俺ちょっとこれ聞きたいんだけどさ」

陽斗「はい!」

有吉「女性って結構何でもお揃いにしたがる人多いじゃない? もし彼女にそういうのしたいって言われたらやれる?」

陽斗「あからさまにっていうのはちょっと恥ずかしいから、系統が一緒とか、アクセサリーがお揃いとか、そういう感じなら。でも彼女がどうしてもやりたいなら、僕も喜んでやります」

櫻井「おぉ!」

有吉「もう模範解答だね」
と、拍手する。

翼「俺も全然! 彼女がやりたいことはなんでも叶えたいです!」

有吉「ちょっと今田中くんだから。杉野く んにも後でちゃんと聞くから!」

翼「忘れないでくださいね!」

櫻井「田中くんって異性のどういう仕草にキュンとするの?」

陽斗「例えば、これ櫻井さんもだと思うんですけど、僕たちユニクラウンはそれぞれメンバーカラーがありまして」

櫻井「はいはいありますね」

陽斗「うちだと翼くんが青で僕が黒なんですけど。彼女の日常生活の中で僕のカラーの物がさりげなく増えていたり、あと発売日とかにCD買っちゃったって見せてくれたりしたら多分キュンとしちゃいますね。あとドラマとかバラエティをチェックしてくれたり。ちょっと恥ずかしいけど嬉しいです」

有吉「そうだよね。近しい人だったら田中くんがCDあげることもできるもんね」

陽斗「そうなんです! そこを相手の人が積極的にやってくれると、キュンとします」

櫻井「黒っていいよね。集めやすいし、集めてもそんなに困らないし」

有吉「確かにね。山吹色とかだと難しいよね」

翼「メンカラ山吹色って渋いですね」

一同、盛り上がる。

櫻井「俺個人的に聞きたいのは、田中くんぶっちゃけ同業者の恋人はあり?」

陽斗「同業者……アイドルってことですか?」

櫻井「まぁ広くとって芸能人でいいよ」

陽斗「同業者だからナシとかはないです。でも仕事の時は仕事モードになってるのでみなさんあくまで仕事仲間なんですよね。まず恋愛対象でないというか。でも何かに一生懸命な人に惹かれるので、それが同業者だったっていうのもあり得なくはないと思います」

有吉「よーし、仕事頑張ろっと!」

櫻井「有吉さんどんだけ田中くんに好かれようとしてんですか」

一同、笑う。

えま「ねぇカーリー。陽斗くんって彼女いるのかな? やっぱり女優? それともモデルかな? まさかのアイドル? スタッフさんもあり得るよね」

カーリー、すやすや眠る。

スリッパの音が聞こえてきてえまが振り返る。
陽斗が入って来る。

陽斗「……ただいま。まだ起きてたんだ」

えま「……おかえりなさい。今夜会見てて」

陽斗「あ、あー」

えま「……この時間までお仕事ですか?」

陽斗「……うん。ツアー近いからね」

えま「……そうですよね。お疲れ様です」

陽斗「……隣、座ってもいい?」

えま「ど、どうぞ」

えま、少しズレる。
陽斗、えまの方を向いてソファに正座する。

えま「え?」

陽斗「……この前のこと、ちゃんと話したくて」

えま「は、はいっ!」

えまも正座して向き合う。

陽斗「ごめん。正直メンバー帰ってからの記憶はほとんどなくて。俺がなんとなく覚えてるのは、夜中に目が覚めた時えまが俺の膝で寝てて。体勢キツイだろうと思ってソファに寝かせて、俺も寝ぼけてたからそのまま一緒に横になっちゃったっていう……」

えま、話を聞きながら頷く。

えま「私は陽斗くんに水を飲ませた後、陽斗くんの頭が肩に乗っかって。起こそうと思ったんですけど、起こすのも可哀想で少し様子見ようと思ってたら私もそのままいつの間にか寝ちゃって……」

陽斗、片手で顔を覆う。

陽斗「うわー。やっぱ原因は俺だ。ほんとごめん!」

陽斗、ソファの上で土下座する。
えま、陽斗の体を起こす。

えま「そんなやめてください! 私の方こそごめんなさい! ソファでそのまま寝かせるなんて……ツアー前って分かってたのに!」

えまも土下座する。
陽斗、えまの肩を持って起こす。

陽斗「いーや! 全部俺が悪い!」

えま「私です!」

陽斗とえま、見つめ合い、フッと笑う。

陽斗「じゃあ今回は仲直りってことでいい?」

えま「え? 私たち喧嘩してたんですか?」

陽斗「だってえま怒ってたんじゃないの⁉︎ ほら、朝ごはんの時、俺の手が当たったの嫌だったからコップ離したのかと……」

えま、ケラケラ笑う。

えま「まさか! 違いますよー」

陽斗「なんだ良かったー。完全に嫌われたかと思った。マジで佐々木担に替えられるかと思った」

えま「そんなことあるわけないじゃないですか! 陽斗くん心配しすぎ」

えま、ニコッと笑う。
陽斗ももつられて笑う。


○同・廊下(夜)

えまと陽斗の会話が漏れ聞こえている。
類、リビングの陰で壁に背を預けて腕を組んで立っている。
美香が近づいてくる。
類、自分の口に人差し指を当てて「しー」っとする。
美香、そっとリビングを覗く。

美香「(なるほどね)」
と、頷きながら部屋へ戻って行く。

えまと陽斗の笑い声が聞こえる。
類、口角を上げる。


○同・玄関(朝)

類、スーツケースを持って靴を履いている。
美香と陽斗が見送り。

美香「来る時も帰る時も急ねぇ。今度帰って来る時はもっと早く教えてね」

類「うん。色々ありがと。父さんとえまにもよろしく」

陽斗「色々ご迷惑をおかけしました」

類、フッと笑う。

類「いーよ。田中くんが悪い奴じゃないことは分かったし」

美香「またそんな偉そうなこと言って! えまに怒られるわよ」

陽斗「あはは」

類「じゃ!」
と、ドアを開ける。

美香「気を付けてね」

陽斗と美香、手を振る。


○タクシー・車内(朝)

類、後部座席でパソコンを開く。
画面にメッセージ通知がくる。

〈えま:気をつけてね。仕事頑張って。今度このバッグ欲しい〉
と、高級ブランドのバッグの写真が送られてくる。

類、ニヤッとする。

〈類:もちろんいいよ。一緒に買いに行こ〉と送る。

〈えま:ネットで買って送ってくれればいいよ〉
と、返事がくる。

類「ほんと素直じゃないなぁ」
と、嬉しそうに笑う。