○テレビ局・廊下
番組プロデューサー塚越洋(47)が歩いている。
スマホが鳴り、画面には【大魔王】の表示。
塚越、ため息をついて、

塚越「……もしもし」

宮本の声「(ハイテンションで)塚ちゃーん。忙しいとこごめんね。ちょーっと頼みたいことあってさ」

塚越「このタイミングで宮本さんから頼みたいことって嫌な予感しかしないんですけど……それより田中くん、大丈夫なんですか?」


○事務所・会議室

宮本、会議中に電話。

宮本「さすが塚ちゃん。話が早くて助かるよ」

太田「(小声で)塚ちゃんって誰ですか?」

後藤「(小声で)カウントダウンミュージックの塚越プロデューサー、通称・塚ちゃん」

太田、「あ~」と納得。

塚越の声「きっと知らない人の方が少ないですよ。それで、何ですか頼みって。大体予想つきますけど」

宮本「(悪だくみの顔)今週のカウントダウンにさ、ユニクラ入れてもらえないかな~って」

太田、ぎょっとする。
二宮と後藤、「いつものやつ」と頷く。


○テレビ局・廊下

塚越、「出たよ」という顔。

塚越「あなたって人は本当に……毎回毎回お願いの域を越えてるんですよ。自覚ありますか?」

宮本「(笑いながら)塚ちゃんだから頼んでるんだよ。もちろんタダでとは言わない」

塚越、立ち止まる。

塚越「……と言うと?」

宮本の声「ユニクラとルトエーに新曲を披露させる」

塚越、一瞬フリーズする。

塚越「あの、お願いが1つ増ええてるの気づいてます?」

宮本「ルトエーは新曲テレビ初公開。ユニクラはまだ情報も出してない、出来立てホヤホヤの新曲を宇宙最速初解禁。公式でも出してないやつを塚ちゃんの番組に捧げさせてもらうよ。どう? なかなか盛り上がるだろ?」

塚越、呆れながら笑う。

塚越「(ボソッと)このオッサンほんとどうかしてる」

宮本の声「おーい塚ちゃん今オッサンって言った? 言ったよな? なんだ反抗期か?」

塚越「(ワクワクしながら)そもそもスケジュール大丈夫なんですか? ユニクラもルトエーも忙しいでしょ?」


○事務所・会議室

宮本、口角を上げる。

宮本「塚ちゃんのためならどうにでもするよ」

塚越の声「……分かりました。枠はなんとかします。でも、期待はしないでくださいよ。俺も所詮雇われの身なので」

宮本「塚ちゃんはいつだって期待を越えてくる男だから。いつもありがとな。はいはい、それじゃあ」

宮本、電話を切る。

宮本「今週ユニクラとルトエー、カウントダウンの枠押さえたから。調整よろしく!」

二宮・後藤「はい!」

太田、小さく拍手。


○高校・職員室

電話が鳴り続け、職員が対応に追われている。

教師「申し訳ありませんが、そのようなお問い合わせにはお答えしかねますので」

事務長「ですから、答えられないって言ってるでしょう!」

教頭と谷口、部屋の様子を見る。

教頭「宮本さん呼ぼうか。あと保護者にも連絡して」

谷口「分かりました」


○同・教室

生徒、机を椅子を後ろに下げて掃除中。
雑巾で黒板を拭いているえまの背中。
教室の外から女子2人が入って来る。

女子1「ねぇねぇ、宮本えまちゃんだよね?」

えま「う、うん」

女子2「これってえまちゃんなの?」
と、例の投稿を見せる。

えま、大きく目を見開く。

えま「ちょっと見てもいい⁉︎」

えま、女子2のスマホでコメントをスクロール。

女子1「これってえまちゃんだよね! この隣にいるのって本当にユニクラのはるピー? なんで知り合いなの?」

えま、真っ青になる。
桃香、教室に戻ってくる。

桃香「えまぁ~聞いてよぉ……」

桃香、異変に気付いてえまに寄る。

桃香「なに? どうしたの?」

女子2、桃香に例の投稿を見せる。

桃香「写ってるの誰か知らないけど、これ絶対勝手に載せてるよね? しかもこうやって個人を特定するような情報書き込むなんて頭おかしいんじゃないの⁉︎」

女子1「私たちに言われても……ね?」

女子2「(頷いて)回って来ただけだし」

谷口「おーい。午前で帰れんだからちゃんと掃除しろよー」
と、教室に入って来る。

女子2、スマホを後ろに隠す。

谷口「ほら、スマホは見なかったことにするから、教室戻れー」

女子1「谷センありがと!」

女子2「イケメン!」
と、教室を出ていく。

谷口「ごめん宮本。ちょっといいか?」

えま、コクリと頷く。

桃香「(心配そうに)谷セン……!」

谷口「大丈夫だから」
と、えまと歩いて行く。


○同・面談室

谷口の声「失礼します」
ノックして谷口とえまが入って来る。
テーブルを挟んで校長と美香が座っている。
美香、立ち上がって、

美香「お騒がせして申し訳ありません」
と、頭を下げる。

谷口「いえいえ。こちらも突然お呼び立てして申し訳ありません」

校長「宮本さんも掃除中にごめんね。とりあえず座って」

えま、美香の隣に座る。
谷口、校長の隣に座る。

えま「……SNSのことですよね?」

谷口「知ってたか……誰かに何か言われたか?」

えま「……さっきD組の子たちに聞かれました」

谷口「全く、みんな情報キャッチするのが早いな」

えま「きっと学校に電話とかもかかってきてますよね?」

校長と谷口、顔を見合わせる。

えま「……ごめんなさい」
と、頭を下げる。

谷口「なんで宮本が謝るんだよ。宮本もびっくりしたよな」

校長「さっきお母様にも伝えたんだけどね。今日宮本さんを呼んだのは、作戦会議がしたかったんだ」

えま「作戦会議……?」

谷口「とりあえず明日全クラスでこういう投稿をイタズラに拡散したり、誰なのか特定したりいないよう言ってもらう」

えま、激しく首を横に振る。

えま「それだと先生たちに庇ってもらってる感じになるし、余計に怪しく見えちゃいます……私のことは別にいいんです。(涙を浮かべて)でも、その写真に写ってる人には絶対迷惑かけたくないんです……」

えまの目からポロポロ涙が零れる。
教頭と谷口、心配そうにする。
美香、えまの涙をハンカチで拭く。

校長「分かった。宮本さんがそう言うなら、みんなには何も言わない。その代わり、何かあったら1人で抱えこまないこと。家の人でも、谷口先生でも、友達でも誰でもいい。相談しやすい人に必ず相談すること。いいかい?」

えま「……はい。ありがとうございます」

えま、膝の上で手を握りしめながら深く頭を下げる。


○同・廊下

えまと美香が部屋を出てくる。

桃香「えま!」

えま、桃香を見て再び涙が浮かぶ。

えま「……桃香ぁ……」

桃香、えまに駆け寄って抱きしめる。
えま、鼻をすすって泣いている。

桃香「大丈夫、大丈夫」
と、背中をさする。

谷口と美香、2人を見守る。


○宮本家・えまの部屋(夜)

真っ暗な部屋。
えま、SNSを開こうとしてやめる。
メッセージアプリのアイコンにたくさんの数字。
桃香や大和、陽斗からのメッセージ。
えま、陽斗からのメッセージを見る。

〈陽斗:俺のせいでごめん〉
〈陽斗:全部俺のせいだから〉
〈陽斗:えまは何も悪くないからね〉

えま、陽斗に返信。

〈えま:迷惑かけてごめんなさい〉

えま、画面を消して目を閉じる。


○高校・教室(朝)

登校して来た生徒で賑やかな教室。
えま、静かに教室に入って席に座る。
すぐに女子が寄って来る。

女子3「ねぇ、これってえまだよね?」
と、例の投稿を見せる。

えま「……どうだろ。写真ブレてるから……」

女子4「隣の人って彼氏?」

女子5「文化祭の時確か男の人がえまに会いに来てたよね?」

女子3「そうだ思い出した! (小声で)じゃあ、あれが田中陽斗だったの?」

えま、困った顔。
桃香、教室に入って来てえまが囲まれているのが見える。

桃香「あのさ。誰が流したかも分からない情報でこうやって問い詰めるのやめようよ」
と、輪に割り込む。

女子4「ねぇ、紗耶香はどう? 一番気になってるんじゃない? この写真」

紗耶香がちょうど教室に入って来る。

紗耶香「……なに?」

女子5「これ。田中陽斗の写真」
と、例の投稿を見せる。

紗耶香「あり得ないから。陽斗くんはね、プロのアイドルなの。今までこういう女絡みのスキャンダルなんてなかった。なのに今更こんなヘマするわけないから。それに高校生なんかが釣り合うわけないじゃん。陽斗くんのタイプは年上。しょうもないことで騒がれて本当に迷惑。拡散なんてくだらないことしないでね。陽斗くんに迷惑だから」

クラスが静かになる。

女子3「……さすが、次元が違うわ……」

女子4「そういえばえまに会いに来てた人って、女の人苦手で引きこもりなんだっけ? ワケありなんでしょ? 田中陽斗なわけないか」

女子5「ごめんね聞き出すようなことして」

えま「……うん、大丈夫……」

えま、席に座る紗耶香を見つめる。


○同・廊下(朝)

紗耶香、廊下を歩いている。
えま、廊下に飛び出して、

えま「紗耶香! ちょっといい?」
と、呼びかける。

紗耶香、振り返ってえまを睨む。


○同・空き教室(朝)

教室の真ん中で向かい合う2人。

紗耶香「(冷たく)なに?」

えま「……さっきはありがとう。なんか私うまく言葉が出てこなかったから助かった」

紗耶香「別にえまのためじゃないから」

えま「うん、分かってる……」

紗耶香「(イラっとした顔)」

紗耶香、えまの頬をパチンと叩く。
えま、放心状態。

紗耶香「ねぇ、何してんの? 自分が何したか分かってる? あれはどう見ても陽斗くんだった!」

えま「……!」

紗耶香「なんで陽斗くんがうちの文化祭来てえまと一緒にいたのか、本当は気になるけど。でも今はどうでもいい! ただこの騒ぎのせいで陽斗くんが嫌な気持ちになっただろうなとか、今後の活動に支障をきたしたらどうしようとかそれだけが心配! 陽斗くんやユニクラのこれからに何かあったらえまのせいだからね? 私一生恨むから!」

紗耶香、感情的に言い放って教室を出ていく。
えま、茫然と立ち尽くす。

えま「……ファン失格だ……」

えま、しゃがみこんで膝に顔を埋める。


○ミラベル・バックヤード(夜)

勇輝、休憩室で例の投稿を眉をしかめて見つめる。

綾乃「お疲れ様―」
と、入って来る。

勇輝「あ、お疲れ様です」

綾乃「どうしたの、険しい顔して」

勇輝、綾乃に投稿を見せる。

綾乃「これ隣のってえま……? 違うか」

勇輝「いや、多分そう……」

舞「こーら勇輝! 食べ終わったら早く戻って来てよ! (綾乃を見て)あ、綾乃お疲れ!」
と、顔を覗かせる。

綾乃「……お疲れ様です」

舞、2人の異変に気付く。

舞「どうした? 2人してそんな神妙な顔して」

勇輝、舞にも投稿を見せる。

舞「なにこれ……」

勇輝「SNSで回ってきたんですけど、結構騒ぎになってるみたいで……」

綾乃「盗撮写真載せたり、勝手に情報書き込んだり。ネットリテラシー低すぎ!」

勇輝「(心配そうに)アイツ大丈夫かな……」

綾乃、勇輝の横顔をチラッと見る。

舞「……私たちはいつも通り接してあげよう。それが一番」

勇輝と綾乃、頷く。

舞「準備できたら来てよー」
と、戻って行く。

勇輝・綾乃「はーい」

勇輝、スマホを仕舞って立ち上がる。

綾乃「えまに連絡してあげた方がいいんじゃない?」

勇輝「いや、今はそっとしておきます。俺らが知ってるって方がアイツ気遣いそうだし」

綾乃「そっか……」

勇輝「でも分かんない。俺よくえまに『女心分かってない』って言われるし。先輩だったらどっちがいいですか?」

綾乃「私? 私は別に……アンタがそう思うならそれが正解だよ。えまのこと一番よく分かってるだろうし」

綾乃、エプロンを付けて先に出る。
勇輝、綾乃の背中を見て首を傾げる。


○同・店内(夜)

陽斗が店に入って来てレジに来る。

綾乃「いらっしゃいませ。お伺いします」

陽斗「えっと……アイスコーヒ―1つ」

綾乃「かしこまりました。400円になります」

陽斗、支払いをする。

×  ×  ×

陽斗、ドリンクを待ちながらえまを探す。
勇輝、ドリンクを作りながら陽斗をチラッと見る。

勇輝「えまならいないですよ」

陽斗「えっ」

勇輝「はい、アイスコーヒーです」
と、カップを渡す。

陽斗、受け取りながら、

陽斗「……えま最近どう?」

勇輝「お客様、たまに来られる方ですよね? えまの知り合いなら、連絡すればいいんじゃないですか?」

勇輝、陽斗を怪しむ目でじーっと見つめる。
陽斗、顔を隠すように帽子を深く被る。

陽斗「……ですよね。ありがとうございます」
と、出口に向かう。

勇輝「どっかで見た顔なんだよな……」
と、首を傾げる。


○事務所・ダンススタジオ(夜)

鏡張りのスタジオ。
ユニクラウン、音楽に合わせて真剣にダンス練習。

悠真「なんとか全員でスケジュール揃って良かったね」

柊也「合わせなしで本番もあり得たよな」

翼「(ふざけて)陽斗お前が忙しすぎなんだよ!」

陽斗、暗い表情。

凛太郎「もうはるピー! 俺がいいよって言うまでネット見るの禁止って言ったじゃん!」

陽斗「見てないよ、見てない……」

翼「大丈夫だよ。社長、いや事務所の総力を結集させて元の投稿は消されてるし、何も問題にはなってないじゃん! あとはそのうちみんな興味なくなるのを待つ!」

陽斗「……でも、あの写真は永遠にネット上に残る。えまを晒し続けることになる……」

メンバー「……」

陽斗「みんなにも、迷惑かけて本当にごめん!」

陽斗、土下座する。

凛太郎「やめてってば!」

悠真「そうだよ。はるピーが謝ることじゃないんだから」

柊也、しゃがんで陽斗の肩をトントンする。

柊也「せっかくもらったチャンスなんだからさ。あんあくだらない話題消し飛ばすくらい、カウントダウンでぶちかまそうぜ!」

翼「おー!」

陽斗「……うん」


○高校・食堂

お弁当袋を持ったえまと、トレーを持った桃香が席に座る。
近くに座る男女がえまを見てこそこそ話す。

女子1「あの先輩だよ」

女子2「ねぇ、話しかけてきて」

男子1「なんて言うんだよ」

女子1「え~? なんだろ」

男子2「『田中陽斗と俺どっちがカッコいいですか?』って」

男女、キャハキャハ盛り上がる。
えま、気付かないフリ。
桃香、男女をキリっと睨む。
男女、静かになる。
えま、桃香を見て微笑む。

えま「ありがと、桃香」

えま、バッグからゼリーを取り出す。

桃香「えまそれだけじゃ足りなくない⁉︎ カレーあげようか?」

えま「ありがと……あんまりお腹空かなくて。(気丈に)最近食べ過ぎてたからちょっとダイエットも兼ねてね!」

桃香、辛そうにえまを見る。

桃香「そうだ! 今日のカウントダウンミュージック、ユニクラ出るよね! 新曲宇宙初解禁だって!」

えま「……そうなんだ」

桃香「うそ、知らなかったの?」

えま「うん……何も見てなくて」

桃香「そっか……じゃあ私が代わりにユニクラの情報をえまに伝えるよ!」

えま「桃香アイドル全然なのに?」

桃香「うん、全く知らない! でもね、オタクって、全界隈共通だから。完璧に情報集めるから任せて!」

えま「フフッ」

えま、笑いながら切なそうな顔。


○テレビ局・楽屋(夜)

陽斗、鏡の前に座ってスマホを見る。
えまとのメッセージ画面。

〈えま:迷惑かけて本当にごめんなさい〉
〈陽斗:電話で話せる?〉

以降既読がついていない。

陽斗「……」

楽屋の外で声がして、荒々しくドアが開く。

直哉「おい大和待てよ落ち着けって!」

直哉の制止を振り切って大和が陽斗の目の前に来る。
陽斗、立ち上がる。
大和、陽斗の衣装の首元を引っ張って、

大和「俺言ったよな⁉︎ 距離感気をつけろって! お前自分が何したか分かってんのか⁉︎ メンバーだけじゃない、一般の、それも未成年の女の子を巻き込んだんだぞ⁉︎」

柊也と悠真、大和を離そうとする。

柊也「俺らも意識が甘かった。これは俺らの責任でもある」

悠真「大和落ち着けって!」

ルートエーも止めに入る。

遼「大和! 落ち着けって!」

大和、陽斗を離さない。
陽斗も抵抗しない。

後藤「お前ら何やってんだよ!」

後藤が入って来る。
大和、ようやく陽斗を離す。

後藤「勘弁してくれ、本場前だぞ」

大和「……すいません」
と、楽屋を出ていく。

夏樹「大和ッ!」

遼と夏樹、大和を追う。

直哉「はるピーもみんなも、ごめんな」

直哉も3人を追って楽屋を出る。

凛太郎「はるピー大丈夫?」

陽斗「……うん。ごめん、ちょっと頭冷やしてくる」

悠真「はるピー」

悠真、追いかけようとするが柊也に止められる。

柊也「(首を横に振る)」

悠真「……」


○同・ルートエーの楽屋(夜)

大和、鏡の台に座って壁にもたれる。

夏樹「大和の気持ちも分かるけどさ。さっきのは暴走しすぎ」

小野寺「でも青春ドラマみたいで俺ちょっと興奮した」

夏樹「(笑って)おい!」

直哉「あとでちゃんとはるピーに謝っとけよ」

大和、不満そうに頷く。
直哉、フッと笑う。


○同・モニター室(夜)

宮本と塚越が画面でユニクラウンのパフォーマンスを見る。

宮本「塚ちゃん本当にありがとね」

塚越「やめてくださいよ。そんな素直にお礼言われるの気持ち悪いです」

宮本「ハハッ。俺にそんなズケズケ言ってくんのは塚ちゃんくらいだよ」

塚越「俺にこんな無理言ってくんのも宮本さんくらいですよ」

宮本「だろうな」

塚越「まぁでも、ユニクラの人気は確かですし、こうしてうちで独占させてもらえるのはありがたい限りですけど。もう少し俺のことも考えてくれればなお嬉しいです」

宮本「久しぶりに行っちゃう?」

塚越「魚でお願いします。そろそろ肉きつくなってきたんで」

宮本「お前もう肉ダメなの? 早くない?」

塚越「(笑って)余計なお世話ですよ」


○高橋家・リビング(夜)

桃香、真剣な顔でカウントダウンミュージックを見る。

桃香の母「桃が3次元の番組見るなんて珍しい。誰か出てるの?」

桃香「ちょっと友達の推しがね!」

画面にユニクラウンが映る。
桃香、拍手する。


○宮本家・ダイニング(夜)

美香、カーリーを抱いてカウントダウンミュージックを見ている。

美香「えま! 陽斗くんたち歌うよ!」

えま、テレビ画面をチラッと見る。

えま「あぁ……うん……」

えま、ダイニングを出て行く。
美香、心配そうに見つめる。


○同・えまの部屋(夜)

えま、ベッドの上で体育座りをして膝に顔を埋める。


○テレビ局・廊下(夜)

陽斗、楽屋に向かって歩いている。

大和の声「陽斗!」

陽斗、振り返ると大和が立っている。

大和「さっきはごめん。本番前に」

陽斗「いや。本当に大和の言う通りだから……」

大和「いや。お前自身が一番責任感じてんの分かってたのに言い過ぎた。えまちゃんと連絡とってる?」

陽斗「1回返信あったけど、その後は何も……」

陽斗「そっか」

スタッフ、陽斗を呼びに来る。

スタッフ「すみません陽斗さん。そろそろ……」

陽斗「あ、はい! (大和に)じゃあまた」

大和、手を挙げて陽斗を見送る。


○同・ユニクラウンの楽屋(夜)

宮本「お疲れさん! 急で悪かったな!」

柊也「いえ。ありがとうございました!」

宮本「(陽斗を見て)もうだいぶ落ち着いてきてるから、大丈夫だぞ」

陽斗「……本当にご迷惑をおかけしてます」
と、深々と頭を下げる。

宮本「やめろやめろ! 照れるだろ!」

陽斗「(緊張した顔で)あの社長。1つお願いが」

宮本「ん?」


○宮本家・玄関(夜)

宮本、美香、陽斗、立ち話。

美香「ごめんね……えまもう寝ちゃって」

陽斗「(察する)そうですよね……こんな夜遅くにすみませんでした」

美香「ううん。陽斗くんちゃんとご飯たべてる?」

陽斗、頷いて、

陽斗「社長、美香さん。この度はえまさんを巻き込んでしまい本当に申し訳ありませんでした」
と、頭を下げる。

宮本「陽斗!」

美香「陽斗くんやめて? あの時私たちが陽斗くんを1人にして行っちゃったから……ごめんなさい」
と、陽斗を起こす。

美香「えまもね、普通に学校行って元気だから大丈夫。責任なんて感じなくていいからね」

陽斗「えまさんにも本当にごめんなさいと伝えてください」


○同・えまの部屋(夜)

えま、ベッドに入って眠らずにボーっとしている。


○同・玄関(朝)

えま、靴を履いて、

えま「……行ってきまーす」

美香の声「はーい! 行ってらっしゃい!」

えま、家を出る。


○高校・教室(朝)

谷口、教卓に立って出席確認。

谷口「誰か宮本から連絡きてるか?」

生徒、ザワザワする。

谷口「分かった。先生から保護者に連絡しておく」

桃香、えまにメッセージを送る。

〈桃香:大丈夫? 今どこ?〉

男子「女子が色々言ったからじゃん?」

女子たちが気まずそうにする。

桃香「そうやって蒸し返さないで!」
と、男子に怒る。

紗耶香、反省の顔。


○事務所・社長室(朝)

宮本、椅子に座って電話。

宮本「落ち着いて。とりあえず美香はバイト先と、お義父さんたちの所に行ってないか確認して。あとは俺がなんとかするから」

美香の声「何か事件に巻き込まれてたらどうしよう……」

宮本「大丈夫。俺が必ず見つけるから。うん、うん。何か分かったらすぐ連絡する。じゃあね」

宮本、電話を切る。

秘書「えまさんに何かあったんですか?」

宮本「えまが朝家を出てから行方不明らしい」

秘書「それは緊急事態ですね。家からの足取りを追わせます」

宮本「頼む。ずらせそうな予定はリスケして」

秘書「分かりました」


○ミラベル・店内

扉が開いて美香が入って来る。

舞「いらっしゃいませ」

美香「すみません。宮本えまの母です」

舞「あぁ、えまさんの! 店長の木村です。えまさんにはいつもお世話になってます」

美香「いえ、こちらこそ……あの、今日ここにえまが来ませんでしたか?」

舞「いえ。シフトも入ってないですし……何かあったんですか?」

美香「実は朝家を出たきり連絡がつかなくて……」

舞「(驚いて)もし来たらすぐに連絡しますね!」

美香「お願いします」
と、頭を下げて店を出る。


○スカイツリー付近・歩道

えまが歩く姿。
建物の間からスカイツリーが見えている。


○事務所・スペース

ユニクラウン、椅子に座って動画の撮影中。

凛太郎「チャンネル登録もよろしくね!」

翼「ばいびー!」

メンバー、カメラに向かって手を振る。

スタッフ「はい、OKです!」

悠真、大きく伸びをする。

悠真「やっぱ3本撮りはキツイね」

翼「ねぇなんか出前とらね? スタッフさんも良かったら!」

一部スタッフは喜び、一部スタッフはバタバタしている。

柊也「今日いつもより忙しそうだな」

悠真「何かあったんですか?」
と、スタッフに聞く。

スタッフ「実は社長の娘さんと連絡がつかないらしくて」

スタッフ、こっそり耳打ちする。

陽斗「⁉︎」

凛太郎「えまちゃんが⁉︎」

悠真「はるピーのとこに連絡は?」

陽斗「(スマホを見て)いや、何も……」

翼「スマホの電源切ってるのか」

柊也「心配だな……」

陽斗、決心した顔でスマホを触る。

凛太郎「はるピーどうしたの?」

メンバー、陽斗の周りに集まる。

凛太郎「あー!」

悠真「なるほど!」

柊也「いいじゃん」

翼「俺が添削してやるよ」

陽斗、真剣な顔でスマホに文字を打つ。

×  ×  ×

陽斗「みんなありがと!」

悠真「はるピーの思いはちゃんと届くよ」

翼「あとはえまちゃんだな。高校生が行きそうな所ってどこだ?」

凛太郎「新宿、渋谷、原宿とか?」

柊也「陽斗は心当たりない? えまちゃんがよく行く場所とか、思い出の場所とか」

陽斗「……もしかしたら……!」

陽斗、何か思いついた顔で走り出す。

翼「おい、陽斗!」


○隅田川テラス

えま、柵に寄りかかってスマホを出す。電源が切れている。

えま「あれ、電源切れてた」

えま、電源をつけるとメッセージや不在着信が表示。
ブログ更新のメール通知がくる。

えま「!」

えま、ブログを開く。

【いつも応援してくれるファンのみんなへ】というタイトル。
えま、緊張した表情で読む。

田中N「この度はお騒がせしてすみません。ネットに上げられていた写真は僕で間違いありません。しかし、ファンのみなさんに顔向けできないような事実はなく、それは今後も変わりません。このように後追いで話をしている自分が不甲斐なく、情けない気持ちでいっぱいですが、これからも僕のことは僕の口から、僕の言葉でみなさんに伝えていくと約束します。だから、どうかこの先も僕を、そしてユニクラウンを信じて一緒に歩いてもらえると嬉しいです。P.S.今隣にメンバーもいます。みんな、いつもありがとう!」

えま「(鼻声)あぁ……」

えま、涙が零れないように空を見上げる。

えま「(鼻声)陽斗くんはアイドルだってあんなに言い聞かせてたのに……」


○隅田川沿い・道路

停車したタクシーから陽斗が出てくる。

陽斗「ありがとうございました!」

陽斗、走りながらえまを探す。

陽斗「!」

柵に寄りかかってるえまの後ろ姿を見つける。


○隅田川テラス

えま、叫ぶ前のように大きく息を吸って、

えま「(呟くように)好き……大好き……」

陽斗の声「……見つけた」

陽斗、後ろからえまの頭にポンと手を置いて隣に来る。

えま「(ビクッとして)なんで……?」

陽斗「なんとなく。ここにいる気がした」

えま「……今の聞こえました?」

陽斗「(とぼける)何か言ってたの?」

えま「(ホッとする)聞こえてないならいいんです」

陽斗「(顔を覗き込んで)好き、大好きって、誰のこと?」

えま「聞こえてるじゃないですか!」

陽斗「(笑って)ごめん、聞こえた」

えま「(早口で)これはですね、ちょっと言ってみただけというか……そう、川! 隅田川っていいな~好きだな~って」
と、言い訳。

陽斗、えまの両頬を片手で挟む。

陽斗「落ち着いて。じゃないとキスするよ」

えま、固まる。

陽斗「(苦笑して)その反応は結構凹む」
と、手を離す。

えま「……からかわないでください」

陽斗「えま、薄々気づいてるでしょ。こんなガラにもない、子供じみたことするくらい、俺……」

えま、陽斗の言葉に被せるように、

えま「そういうの、良くないです! こっちは初心な高校生なんですよ⁉︎」

陽斗「こっちだって、一途なアイドルですけど?」

陽斗、柵の上のえまの手を握る。
えま、それを見つめながら、

えま「……陽斗くんには年上の可愛い女優さんがいるじゃないですか」

陽斗「彼女とはマジでなんもないって! ……えまこそいいの? 今の俺は、ただの田中陽斗だよ?」

えま「そのことは忘れてください! あの時は、陽斗くんにうちでも気を張らせないようにと思って言ったんです。……でも、今感がるとすごく感じ悪くて失礼でしたよね……ごめんなさい」

陽斗「……分かってる。えまはそうやって人のために考えられる人だって。だから俺、えまのこと好きになったんだよ」

えま「!」

えまと陽斗、見つめ合う。
陽斗、えまに顔を近づける。
2人の唇が重なりそうになる。

翼の声「はーい、カットぉー!」

陽斗とえま、驚いて後ろを向く。
撮影クルーに変装した柊也、翼、悠真、凛太郎が立っている。

陽斗「なんでここに……? ていうかその恰好……」

悠真「はるピーが事務所飛び出して行ったからさ」

柊也「万が一のこともあるし、俺たちもいた方がカモフラージュになるかなと思って。ごめん、尾行させてもらった」

凛太郎「でもただついていくだけじゃつまんないし、いっそのこと撮影を装って目立った方がいいんじゃないかと思って、事務所の機材持ってきちゃった!」

凛太郎、えまと陽斗にカメラを向ける。

えま「……まさか、本当にカメラ回してます?」

悠真「いくら俺達でもさ?」

凛太郎「さすがにね」

翼「そんな非常識じゃないよ。どう柊也?」

柊也「……俺は止めたよ?」

陽斗、頭を抱える。

凛太郎「バッチリ撮らせていただいてます!」

翼・悠真「いただいでます!」

えま、両手で頬を押さえながら、

えま「やばい、恥ずすぎる……」

翼「(ニヤニヤしながら)ところでお2人さん、キスはしとかなくて大丈夫?」

柊也「コラ、煽んなって!」
と、翼を叩く。

悠真「翼くんマジヤバい」

凛太郎「(笑いながら)翼くんが邪魔したんじゃん」

陽斗「見せもんじゃないから!」

陽斗、恥ずかしそうに4人の背中を押して歩かせる。
えま、5人の後ろ姿を見て微笑みながら歩き出す。
前の方で急に陽斗がしゃがみ込む。
えま、陽斗に駆け寄ってしゃがむ。

えま「陽斗くん? 大丈夫ですか?」

陽斗、えまの後頭部に片手を回し、自分の方に抱き寄せる。
えま、陽斗の肩先で戸惑う。

陽斗「(真剣なトーンで)えま」

えま「はい」

陽斗「俺、えまのえまの1番になりたい」

えま、目を見開く。
陽斗、さらにぎゅっと抱きしめる。
えまも陽斗の背中に手を回して、

えま「(優しく)もうとっくに1番です」

陽斗、体を離してえまの額に自分の額を合わせる。
至近距離で見つめ合う2人。

陽斗「今はここまでね」

えま、喜びを噛みしめながら頷く。
えまと陽斗、幸せそうに笑い合う。

翼「おーい、イチャイチャしてるそこの2人―置いてくぞー」

翼、メンバーと前を見て歩きながら陽斗たちに向かって話しかける。
陽斗、立ち上がる。

陽斗「行こ!」
と、えまに手を差し出す。

えま、陽斗の手を握って陽斗と走って行く。


○ミラベル・店内(夜)

舞、バックヤードから顔を覗かせる。

舞「えま、無事だったって!」

綾乃「良かったぁ!」

勇輝「(安心して)ほんと、お騒がせなやつ」

綾乃「良かったね。えまに連絡してあげな」

勇輝、綾乃を見つめる。

勇輝「あの……俺先輩に何かしちゃいました? この間から妙に距離感じる」

綾乃「……だって、私がアンタと仲良くしてたらえまが嫌かなって」

勇輝「なぜにえま?」

綾乃「だって、2人付き合ってるんでしょ? 2人がデートしてるの見たよ⁉︎」

勇輝「デート……? ……あぁ! あれか!」
と、笑い出す。

綾乃「ほら! そうでしょ!」

勇輝「あれはデートじゃないし。そっか、だから様子が変だったのか。理解理解」

綾乃「なに? どういうこと?」

勇輝「あれはただ買い物に付き合っただけ。大体アイツ、好きな奴いますもん」

綾乃「(食いつく)え⁉︎ えま好きな人いるの⁉︎ 同じ学校の人⁉︎」

勇輝「(首を横に振って)でも先輩も見たことある人。俺もあるし」

綾乃「えぇ~ちょっと、いいから教えてよ!」

勇輝「ちなみに俺も好きな人いますよ」

綾乃「へぇー」

勇輝「へぇーって。俺のこと興味なさすぎでしょ。普通に傷つくんですけど!」

綾乃「どうせそれも教えてくれないんでしょ? まぁ学校の子とか言われても私に分かんないけど」

勇輝「……ちゃんと信じてくれますか?」

綾乃「人の好きな人を疑うとかないから!」

勇輝「……先輩」

綾乃「なに?」

勇輝「だから、先輩。俺の好きな人は、吉村綾乃さんです」

綾乃「はぁ? ちょっとからかわな……(自分が言ったことを思い出す)」

綾乃、口を手で覆う。

勇輝「そんな反応されたら、俺期待しちゃうんですけど」

見つめ合う2人。
扉が開いて客が入って来る。

勇輝「いらっしゃいませ!」

勇輝、綾乃の横を通る時に

勇輝「今日は先帰るのナシですからね」
と、耳打ちしてレジに行く。

綾乃、顔が真っ赤になっている。


○宮本家・玄関(夜)

美香がドアを開ける。
えまとその後ろにはユニクラウン、宮本が立っている。
美香、えまを抱きしめる。
一同、2人を見守る。


○渋谷駅・ハチ公前

ハチ公の横の桜の木が咲き始めている。


○渋谷・スクランブル交差点

大型モニターでニュースが流れている。
モニターにはS.Sエンターテインメントの声明文。

ナレーター「弊社所属田中陽斗への誹謗中傷につきまして、現在情報開示請求を進めている旨をご報告させていただきます。このような行為は誰に対しても許されるものではありません。弊社は今後とも徹底的に対応して参ります。これからも皆様の変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます」


○ある家・リビング(夜)

男子高校生が帰って来る。
母親、リビングに座って郵便物を見ている。

母親「ねぇ。これ、どういうこと?」

男子高校生「なに?」

男子高校生、母親から紙を受け取る。
【発信者情報開示に係る意見照会】と書かれている。

男子高校生「(青ざめて)なんだよこれ」


○あるアパート・一室(夜)

女子大生、封筒を開けて中身を見る。
【発信者情報開示に係る意見照会】と書かれている。
女子大生、心当たりがある顔。
SNSを開いて【陽斗くんの手握ってる隣の女マジ死んでほしい】という投稿を消す。


○ある一軒家・リビング(夜)

女性が子供にご飯を食べさせている。
男性「ただいま」
と、入って来る。

女性「おかえりなさい。先お風呂入る?」

男性「うん」

女性「あ、なんか郵便来てたよ」

男性、テーブルの上の封筒を手に取る。

男性「なんだこれ」
と、封を切らずにゴミ箱に捨てる。


○テレビ局・楽屋

ユニクラウン、くつろいでいる。

悠真「そういえば今日当落発表だよね?」

翼「SNS盛り上がってるよー」
と、画面をスクロールする。

陽斗、えまにメッセージを送る。

〈陽斗:どうだった?〉

すぐに既読がつき、魂が抜けた人のスタンプが送られてくる。
陽斗、スマホを持って楽屋を出る。


○同・非常階段

陽斗、えまに電話。

陽斗「もしもし? 今のスタンプはどっちの意味?」

えまの声「……全落ちでした……」

陽斗「マジか……倍率えぐいな。じゃあ関係者席とっとくよ」

えまの声「でもまだ友達で結果聞いてない子いるから! もしかしたら当たってるかもしれないです!」

陽斗、もどかしそうな顔をする。


○ライブ会場・待合室

えま、隣に座る陽斗をチラッと見て、

えま「陽斗くん、怒ってます……?」

陽斗「逆に怒ってないと思う?」

えま「……」

陽斗「……俺らのライブには誘っても絶対関係者席には来ないのに、大和の誘いは断らないんだ」

えま「だって、ルトエーのファンクラブには入ってないから仕方ないじゃないですか!」

凛太郎「はるピーやきもち妬いてるぅ」

翼「嫉妬深い男はフられるぞ~」
と、からかう。

陽斗「俺別におかしいこと言ってないよね⁉︎」

陽斗、後ろの柊也と悠真に同意を求める。

悠真「(笑いながら)ノーコメントで」

柊也「(笑いながら)俺らを巻き込まないで」

えま「そういえば! ユニクラのライブ行けることになりました!」

陽斗「(機嫌が戻って)ほんとに⁉︎」

えま「そうなんです。友達が見事当ててくれました!」

陽斗「でも前にえま、オタク友達全然いないって言ってなかった?」

えま「(嬉しそうに)親友がユニ担になってくれたんです」


○ライブ会場・中

えまと桃香、ペンライトとうちわを持ってステージを見つめる。
音楽と共に客席が暗くなり、ステージがライトで照らされる。
ユニクラウン、派手に登場。

観客「キャー――!」

×  ×  ×

陽斗、トロッコに乗って歌いながらえまたちの近くにくる。
桃香、背中を向けている陽斗を指差しながらえまを促す。
えま、頷く。

えま「陽斗くんっ!」
と、叫ぶ。

陽斗がゆっくり振り向いてえまと視線が絡む。

陽斗「(口パクで)見つけた!」
と、えまを指差す。

えま、ニコッと笑ってペンライトを振る。

(了)