醜いお姫様と淡い枝垂れ桜





「おいで?」



甘い声に誘われて彼の腕の中に飛び込む。



大きく温かい手に頭を撫でられ、会えていなかった間のストレスがなくなっていく。



触れ合う地肌にお互いの吐息がかかる。



少しだけ躊躇うように重ねられた唇の隙間から爽やかな歯磨き粉の匂いが香る。



彼と私が言葉を交わすのは服を着ていないときだけ。



人間関係も結んだ約束も服を脱ぐときに全部一緒に脱ぎ捨てる。



それでも、



胸を触る彼の左手の薬指から感じる冷たいものが、



私を現実に呼び寄せて離さなかった。