濁った僕を抱きしめて

「ただいまー」


声をかければ奥のドアから璃恋が出てくる。


「お帰りなさい。って、これどうしたんですか」

璃恋の柔らかい指先が俺の頬に触れる。
男の指先が掠ったのだろうか、小さな擦り傷が出来ていた。


「まぁちょっと絡まれちゃって。ごめん、食材ダメにしたかも」
「そんなのいいです、それより拓海くんは大丈夫ですか」
「俺は大丈夫。てか豚肉がさ」


璃恋にふわりと抱きしめられる。
どうすればいいか分からなくなって、ぎこちない動きで頭を撫でた。


「帰ってくるの遅いなって、ちょっと心配してたんです。そしたらこんな傷つけて帰ってくるから」
「……ごめん、ほんと。ごめん」


体が離れる。
璃恋は涙で頬を濡らし、それをぐっと拭うとまた俺の頬に触れた。


「……もう、心配させないでください」


胸がきゅっと締め付けられるような感覚がした。
喉の奥から絞り出されるようにして出された声。