濁った僕を抱きしめて

何だ、と思った瞬間、先程の場所に拓海くんの姿はなかった。
数メートル離れた先、拓海くんは男に銃を向けている。


その手から、弾丸が放たれた。
銃を持っていない方の手にはナイフが握られていて、その刃先がぷつりと男の肌に入っていく。


男の断末魔と共に、赤い血飛沫が出るのが見えた。
手で押さえた口から、ひゅうひゅうという呼吸音と、がたがたと歯がぶつかる音が漏れる。
拓海くんを見つめたまま、わたしはその場から動くことが出来ない。


パーカーの中の拓海くんの携帯が震える。
携帯を取り出し、電源を入れた。
待ち受けは遊園地で撮ったふたりの写真だった。


どうして?
彼は人殺しだった?どういうこと?
ぐ、と胃から何かが上がってくる。
空気が上がってくる音がした後、地面に顔を向けて吐いた。


何も出来ないまま蹲る。


ぱんぱんと何度も銃声が聞こえてくる。
わたしは耳を塞いだ。
すべてを遮断するように、目も閉じる。