濁った僕を抱きしめて



3



拓海くんが出て行って少ししてから、机の上に置かれた携帯に気がついた。
仕事に携帯は必要なのだろうか。
まぁあるに越したことはないだろう。


携帯を取り、着ていたパーカーのポケットに突っ込む。
拓海くんはいつも歩いて仕事場に向かう。
走れば間に合うか。


拓海くんが仕事に行く様子は、一度だけ見たことがある。
どこに行っているのか知りたくて、こっそりと後ろをついて行った。
その時拓海くんは路地裏を通ってスーパーに入っていった。


スーパーで働いていたのか、なら言ってくれればいいのに、と思いながらその時は家に帰った。


きっと今日も彼はスーパーにいるだろう。
走りながら彼の姿を探す。
路地裏の陰になったところ、一目では見つけられないような場所に拓海くんはいた。


彼は誰かと話をしている。
声をかけようと足を前に出した、その瞬間ー


ーー何かが弾けるような音が、辺りに響いた。