携帯をスピーカーにして、机の上に置く。
拓海くんとふたりで携帯をのぞき込んだ。


『あんたねぇ、聞いてるの⁉今どこにいるかって言ってんのよ!』
「どこにいたっていいでしょ。いつもいなくていいとか言ってたじゃん」


だめだ、わたし。
一回落ち着け。誰の前でも感情を見せないことは得意だったじゃないか。


『璃恋、早く帰ってきて。あなたがいないと困るのよ』


心のどこかが揺れた。
もしかして、母親はわたしを必要としてくれているのだろうか。


もしかしたら、家族で幸せに生きられるのだろうか。


そんな淡い願いは、次の一言でかき消された。


『あんたがいないとあたしが生きられないでしょう。洗濯とか料理とか、あたし出来ないんだから』


ーーああ、やっぱりそうか。


母親はわたしのことを子供だと思っていないみたいだ。
母親にとってわたしは家政婦やお手伝いさんと同等のものなのだ。