濁った僕を抱きしめて

俺ですらその顔は見たことがなくて、家族も友達も誰も見たことがないだろう。
髪を振り回し、猟奇的な笑顔で走り続ける。


璃恋の手をぎゅっと掴んだ。
そうでもしないと、璃恋がどこかに行ってしまう気がする。


璃恋はそれに気づくと、いつもの表情で俺の方を見た。
よかった、璃恋が戻ってきた。


撃っても撃っても警察が出てくる。


走り続けている影響で俺の体力はそろそろ限界だ。
璃恋もきっと同じで、俺の耳には銃声と、俺の呼吸と、璃恋の呼吸しか入ってこない。


後ろから気配を感じた。
今までとは違う、明らかな殺意。


ーー間に合わない。


後ろを向いて銃を撃とうとする。
俺が引き金を引くよりも向こうの方が早くて、俺のとも璃恋のとも違う銃声が轟いた。


体力が十分にある状態なら避けられただろうけど、もうほぼ使い果たしているから身体が重い。
弾丸が俺の足にめり込み、血が足を伝っていく。