濁った僕を抱きしめて

俺は王子かのように璃恋に手を差し出し、それを璃恋が艶やかな笑みを浮かべながら握った。


場所が場所ならかなりドラマチックになっていただろう。


“立入禁止”と書かれたものの壊れている看板を素通りし、深い森の中に入っていく。


璃恋が怖くなったのか握った手に力を込めてきた。
大丈夫、とでも言うように力を込めて握り直す。


低い声で唸りながら虫が飛んでいく音が聞こえる。


これが今じゃなければ叫び散らかしていただろうけど、賭けているものが命の中でそんな余裕は無い。


ここに来るのか初めてじゃなくて良かったなと思う。
道はほぼなく、それでいて視界は薄暗い。
少しずつ夜が明けてきているけど、それでもまだ暗さは拭えない。


こっそりと忍び足で歩けば見覚えのある道に出た。
公園を抜け出し、路地裏に来れたようだ。


路地裏に入ってしまえば俺の勝ちも同然だ。


ここはもう俺の領域であり、誰にも踏み入れさせない。