濁った僕を抱きしめて

車に乗って、すぐにシートベルトをした。


拓海くんはそれを確認するとすぐに車を走らせる。


「本格的に逃亡って感じだね」
「ですね。次の家はどこです?」
「あと二個あるんだけどどっちがいい?タワマンかアパート」
「タワマンの方がバレそうじゃないですか?」
「じゃあアパートね」


これ、と差し出されたメモに書かれた住所をパネルに打ち込む。
無機質な音声がナビを開始した。


「……これ、一番最初の家の近くなんですね」
「あー、そうそう。割と近いんだよ、徒歩圏内」


次に危なくなったらまたその家に戻ろう。
そう決めた。


どちらからともなく喋らなくなり、静寂が訪れると急に不安が襲ってくる。


大丈夫だと思っていたのに追っ手はすぐそこまで迫っているみたいだ。
分かっている。


逃げる意味なんてない。
逃げた先には生きるか死ぬかしかない。


生きれたとしてもその未来に拓海くんはいない。