濁った僕を抱きしめて

自分の語彙力のなさには思わず呆れる。
"拓海くんが拓海くんじゃない"なんて小学生が言いそうな台詞だ。


「何その夢。俺何かにでも変身してたの?」
「変身とか言う可愛いものじゃなかったんですよ。こう、顔がドロドロって溶けて」


ジェスチャー付きで話すと拓海くんは笑ってくれた。
別に笑わせたかったつもりじゃなかったんだけどな。


「で、極めつけは誰かにポンって肩を叩かれたと思って振り返ったらドロドロな顔をした拓海くんなんですよ。怖くないですか?」
「それは流石に怖いわ。ごめん変身とか言って」


笑っていると自然と身体が動いた。
拓海くんが下ろしてくれたスーツケースを転がして玄関の階段を上る。


「言ってた一軒家ってとこですか?ここ」
「そう。長らく来てないからめっちゃ汚いと思う。掃除からだな」


拓海くんの言葉通り、家の中は埃だらけだった。


ボストンバッグをスーツケースの上にのせ、汚れないように玄関に置いておく。