君のブレスが切れるまで外伝―on a rainyday remember love―

 私は何も言うことができなかった。


「えへへーわたしは奏だよ! んーとね、音楽を奏でるって書いて奏! お漢字は書けないけどママから聞いて……あ、もうお家に帰らなきゃ行けない時間だった!」


 大丈夫、忘れないわ。かなで……奏ね。最後にこんな時を過ごせて良かったかもしれない。


「そう、さよなら」
「うん、さようならー!」


 幼い女の子はそういうと、帰り道であろう場所へとパタパタと走っていく。黄色がかった視界は彼女の物となり、私の体にはまた冷たい雨粒が降ってくる。