彼女の誘いに乗ってホテルに入った俺はかつてない程に焦っていた。

 今まで無反応だったことなんてなかった俺のあそこが、やる気満々でベッドに横たわる全裸の彼女を前にして、全くいうことを聞いてくれなくなったのだ。

 このまま何もせずにこの部屋から出るのはありなんだろうか?この際、俺のプライドなんてどうでもいい。だが彼女はどうだ?裸の自分に興奮されないってきつくないか?正解が全くわからない‥‥

 俺は覚悟を決めた。部屋が薄暗いのをいいことに、固く目を閉じる。そして、全力で愛海との行為を想像した。それは愛海と出会ったその日から俺がほぼ毎日繰り返している想像で、その効果は絶大だ。

 自分が最低最悪なことをしているという自覚はあった。でもこれ以外に今を切り抜ける方法が思いつかなかったのだ。

 彼女にも愛海にも申し訳なくて、俺はそれを最後まで完遂することができず、気まずい空気が漂う中その部屋をあとにした。

 彼女が俺のした最低な行為に気づいていたかはわからない。だがもう二度と同じことはしたくないし、多分彼女も同じ気持ちだったのだろう。それから間もなく彼女の方から別れを切り出され、俺はただ謝ることしかできなかった。

 その子だけじゃない。これまで付き合った女の子達全員に、俺は凄く失礼なことをしていたことにようやく気づき、反省した。

 俺に彼女がいたこの数ヶ月、愛海が嫉妬することはなく、それどころか俺の彼女に悪いからと遠慮され距離まで置かれた。

 愛海にとっての俺は本当に友達でしかないんだと思い知らされ、俺はやさぐれた。いっそ他の誰かを好きになれたらと思ったことが、あの大惨事を招いたのだ。

 俺には愛海しかいないんだと再確認できたのだから、これも無駄な経験ではなかったと思いたい。俺が次に付き合うのは愛海で、愛海が俺の最後の彼女になる。早くそんな日が来ればいいのに‥‥

 その後俺は彼女を作らなくなり愛海も彼氏ができないまま俺達は以前のような関係に戻ったが、3年になってクラスが別れるという悲劇に見舞われる。

 少しでも長く愛海と時間を共有したかった俺は、これまでは別々に過ごすことの多かった放課後にふたりで受験勉強をしようと提案した。

 俺が勉強を教えるようになると元々賢かった愛海の偏差値は面白い程上がり出した。いつしか愛海は俺と同じ大学を目標に頑張り始め、見事合格を果たしたのだ。