翌日、愛海は約束通り俺の買い物に付き合ってくれた。さりげなく、紹介された昨日の男の話を聞いてみる。

「日本には15~20歳の男子が300万人いるらしいから、諦めなければきっといつか運命の相手に会えると思うんだよね」

 言ってることはよくわからないが、とりあえず昨日の男は運命の相手ではなかったらしい。

 愛海は運命の相手を探すために今後も貪欲に出会いを求めると息巻いている。既に運命の相手に出会った俺は、間違いなく幸運だった。

 でも‥‥俺の運命が愛海なら、愛海の運命も俺なんじゃないのか?運命の相手とはそういうものだろう?なんで愛海は俺が運命の相手だと気づかないんだ?

 愛海は少し鈍いタイプなのかもしれない。まあそんなところも可愛いのでなんの問題もないのだが。

 自分の見ためがそこそこいいのは理解している。でもそんなの、愛海に好かれていなければなんの意味もない。愛海の理想に近づくためなら、俺はなんだってするつもりだ。

 とりあえず、愛海のアドバイスに従って人当たりを良くする努力を始めた。人付き合いが苦手な俺のために、愛海が協力を申し出てくれたのは嬉しい誤算だったと言えるだろう。

 その厚意を存分に利用して、俺は可能な限り愛海にべったり張りつき、やり過ぎて嫌がられないよう注意しつつ、俺の存在を愛海の日常に浸透させることに成功した。

 しかし、愛海は俺の想定を越えた『超鈍感』だった。

 愛海は出会いを求めてふらふらし続けていたので、この鈍感さには大いに助けられた。だが同時に、俺はいつまで経っても友達の枠を出られないままなのだ。

 愛海から彼女を作れと言われるのはもやもやする。俺のことは好きだけど、恋人の好きとは違うと言われるのも意味がわからない。好きでもない男とデートするくらいなら、俺が彼氏になっても良くないか?なんで愛海は俺が運命の相手だって気づかないんだ!

 半分やけになった俺は、愛海が嫉妬してくれるのを期待して、たまたま告白してきた女の子と付き合ってみることにした。

 デートして、手を繋ぎ、キスもした。嫌悪感があったわけじゃない。ただ、彼女が愛海じゃなかっただけなのだ。

 彼女が愛海だったら良かったのに‥‥‥‥

 そんな感想を持った俺に相手も何か感じるものがあったのかもしれない。彼女との関係は長続きせず、俺はそれを何度か繰り返した。

 最後に付き合った子もいつもと同じでキスをした時点で違うと感じた。そこでやめておけばよかったのに、妙に積極的な彼女に望まれるままその先に進んでしまった俺は、本当に大馬鹿で最低だったと思う。