とりあえず、素朴な疑問を解決しよう。

「なんで急に服なの?」

「いや‥‥その‥‥なんとなく?‥‥もてたくて?」

 口に水を含んでいたら、多分3メートルは飛ばせた。嘘でしょ?イケメンが何言ってんの?

「いやいや、龍二、既にもててるよね?」

「そんなことない。俺はもててないよ‥‥」

 イケメンの考えていることはビタイチわからん。彼は一体どこを目指しているんだ?‥‥世界か?世界を目指しているのか?

「まあ確かに、いくら顔が良くても服が残念だと台無しってこともあるもんね!」

 その通説は間違っていた。顔だけではなくスタイルもいい龍二は、何を着せてもイケメンなのである。試しにダサいキャラが中央にプリントされてるトレーナーを着させてみたら、それすらもお洒落に見えてくる不思議‥‥これでもてないとか、なんの冗談ですか?って感じだ。

 黙って試着を繰り返していた龍二は『わかんないから、愛海がいいと思ったやつにする』と言って私が選んだ服を購入し、結局それで買い物を全て終了させてしまった。

「本当に龍二がもてないんだとしたら、それは外見じゃなくて中身のせいだと思うよ?」

 疲れたから少し休もうと入ったカフェで、もてない私が偉そうに語る。

「龍二っていつも不機嫌そうでちょっと怖いから近寄りがたいんだよね。もっと優しいオーラを出さなきゃ。龍二は女子に限らず男子ともあまり話さないじゃん?もっと人と交流した方がいいよ。親近感て大切だと思う」

「なるほど‥‥愛海も‥‥俺のこと怖いの?」

「うーん‥‥今日はそうでもなかったけど、昨日まではちょっと怖そうって思ってたかな?」

「‥‥俺、昔から人見知りが酷いんだ。昨日愛海に声かけた時も、凄く勇気をふり絞ってようやくって感じで。今も愛海の顔、恥ずかしくて見れないし‥‥」

 イケメンがツンツンしてたと思ったらただの人見知りとか‥‥何それ?萌えるんですけど?

「そっか、人見知りだったんだ‥‥でも今日は私と結構話せてたじゃん?私も龍二が他の人と話せるようにできるだけ協力するし、少しずつ慣れていけばいいと思うよ」

「愛海‥‥ありがとう」

「お礼なんていらないよー。これくらい友達なら当たり前でしょ?」

「友達‥‥‥‥」

 こうして私と龍二は友達となり、その後行動を共にすることが激増した。龍二は徐々に雰囲気が丸くなり、私以外のクラスメイトとも親しく話せるようになっている。

 怖くなくなった龍二の周辺には女の子達が集まり始め、やっと当初の目的『もてたい』が無事に達成されたのだ。

 これでようやく私の肩の荷が下りた。