「え!?え!?ちょっと待って!?」

 突然キスとか言われて慌てふためく私に、龍二が苦笑いしている。

「そんな怯えなくても愛海が嫌がることを無理強いするつもりはないよ?愛海がちゃんと俺を好きって思えるまでは、キスより先には絶対に進まないって約束もする」

「え?でもなんかそれって、キスするのは確定みたいに聞こえるけど?」

「愛海が俺とキスするのが死んでも嫌ならしょうがないけど、これが一番わかりやすいと思うよ?」

 死んでもって‥‥そこまで嫌ではないけど‥‥

「愛海が思うキスって、どんなイメージ?」

「ええ!?キキキスのイメージ!?あー‥‥甘くて‥‥うーん‥‥ふわふわ?ピンク色?」

「ふふっ‥‥可愛いね。でも多分それは、好きな人とキスした時のイメージなんだと思う。俺が高校の時に彼女とキスした時は、何か違うなって感じた。単純にキスが好きな人もいるだろうけど、俺や愛海みたいなタイプはキスする相手によって感じ方が違う気がする」

 相手によって感じ方が違う‥‥?

「愛海が俺のことが嫌いなら気持ち悪いと感じるだろうし、恋愛対象外なら違和感を覚える。もし友達以上に思ってくれてたら‥‥俺と同じ感想になるのかも?」

「龍二と同じ感想‥‥?」

「愛海とはキスしたことないからどう感じるかはわからない‥‥だけど、俺が愛海とキスしてみれば、少なくともキスで友達と恋人の違いがわかるかどうかだけははっきりするよね?」

 龍二が無駄に色気を振りまきながら近づいてくる‥‥やばい‥‥なんかやばい気がする。

「え?え?ちょっと待って?私達、せっかく友達としてうまくやってたのに、気持ち悪かったりしたらどうするの!?違和感があったら?元カノ達みたいに気まずくて離れてくことになっちゃうかもよ!?」

「俺のことそんなに嫌だったらこんなに一緒にいられるわけないと思うけど?それに友達だと思われるのには既に慣れきってるから、俺にはなんのダメージにもならない。全然大丈夫」

「いやいや!大丈夫じゃないよ?私達、友達でしょ?キスするの、なんかおかしくない?友達はキスなんてしないでしょ?」

「愛海に会えなくなったら俺はきっと耐えられなくなる。遅かれ早かれ今のままではいられなくなるんだよ。友達のままじゃキスできないなら、そうだな‥‥とりあえず仮の恋人になればいい。気持ち悪かったら解消、違和感なら仮のまま、それ以外なら俺達は本当の恋人になる‥‥」

 居酒屋の店先にいたはずが問答してる間に路地裏まで追い込まれていた。龍二はキスする気満々だ。少しでいい、考える余裕が欲しい‥‥どうしよう!どうしたらいいの!?