「疲れた……」

 私は今終わったばかりの仕事にため息をついた。
 時計を見る。もう7時だ。
 私の学校は寮があって、夜でも先生に言えば学校に出入りしていいことになっている。
 でもこんなに長くいたら、みんなに心配されちゃう…

「彩花ちゃん、ありがとう」

 そんな思考に沈みかけた時、晴人くんの柔らかい声がかかった。
「いえいえ!大丈夫です!」
 私は晴人くんの優しい顔に笑みをこぼしながら答える。
「晴人くんこそ、お疲れ様です!」
「うん。彩花ちゃんがいたから頑張った」
「……⁈」
 ……晴人くんはまたっ!

「変な冗談言わないでくださいよ!」
「彩花ちゃん面白いから」
「か、からかわないでください!」

 相変わらず晴人くんにはドキドキしっぱなしだ。

「は、晴人くんは……ずるいですよ」

 悔しくて、つい口をついて出た言葉に、自分でびっくりする。

「えっ……」
「ああ!なんでもないですっ!」

 私は慌て口を押さえた。
 まずい。変な子だって思われちゃった……⁈

「すみません……変なこと言いました」

 私は恐る恐る晴人くんの顔を見た。

 焦ったように口を手で押さえていて、顔どころか耳まで真っ赤だった。
 動揺した様子の晴人くんに戸惑ってしまって、どうすればいいかわからなくなる。

「あの……晴人、くん……?」

 私が声をかけると、晴人くんははっとしたようにこちらを向いた。
「だ、大丈夫、ですか……?」
「ああ……ごめんね」

 そう言う晴人くんは、上の空のようで。

 ______なんだか、胸が騒いだ。