そんな顔させたくなかったのに、好きな人にこんな顔をさせてしまった自分が許せなかった。
でも、どうすることも出来ないし、なんて声を掛けてあげたらいいのか分からなくて唇を薄く噛んだ。

何か言わなきゃ、そう思っても言葉が出ない。


「あははっ、何で立花さんが泣きそうな顔してるの?ごめんね。変なこと言って。気にしないで」


大場くんは、そう言いながら私の頭をぽんぽんと撫でた。


触れられたところが熱い。


泣きそうになるのをぐっと堪えた私は、それ以上見ていられなくて、視線を逸らしてしまった。
その瞬間、ガラッと音を立てて扉が開いたかと思うと、佐竹くんが戻ってきた。

それを見て大場くんは、さっきまでの雰囲気は何だったのかと言うくらいに、何事も無かったかのようにいつもの笑顔に戻った。


「悪ぃ、遅くなった」


そう言いつつも全く悪びれる様子もなく、こちらへ近づいてくると、机の上に鞄を置いた。


「ほんと遅い!待ちくたびれちゃったよ」と文句を言う大場くんに、めんどくさそうな顔をして頭を掻いた佐竹くんは、ふと私の方を見て、眉間にシワを寄せて訝しげな表情をした。


「お前、どうした?」


私はそんなに変な顔をしていたのだろうか。

佐竹くんに言われてハッとした。

ダメだ、ちゃんと笑わないと。笑って誤魔化さないと。