人付き合いが苦手な上に、よく分からない自虐妄想で輪の中に入ることはせずに僕らを遠巻きに、どうでもよなさそうな顔をして今までは見ているだけだったのに最近はちょっと違っている。

ずっと、見て来たから小さな変化にも気づいてしまう。旭は最近よく立花さんを目の端で追っている。

たぶん本人は無意識だ。


「おい、一輝!」


急に呼ばれ振り返ると旭がこっちを見ている。
どうしたの、かと聞くと小さく舌打ちをして


「やっぱりいい」



そう言ってそっぽを向いてしまった。


なんだろう、旭は用もないのに話しかけてくることはないし、今みたいに呼んだくせに何も言わないなんて初めてだ。


うーん?考えを巡らせようと旭から視線を外しした視界の先に、オドオドしながら教科書を持った立花さんがこちらを見ていた。


あぁ、そっか。そういうことか。


察してしまった僕は席を立ち歩き出すと、旭の肩をポンっと叩いて立花さんに声をかけた。


「立花さん、もしよかったら一緒に勉強しない?」


そう言うと、驚いた顔をした後、頬をほんのり赤く染めて頷く彼女をみんなの輪の中へ連れていった。


僕、ちゃんと笑顔作れてたかな。


肩に触れた手は熱いのに胸の中は冷えきって痛いくらいだった。