━━━ドックン



突然、心臓の音が大きくなって、旭に触れられたところが熱い気がする。
いや、違う……気のせいじゃない、確実に心臓がバクバクと音を立てて脈打ってる。

今まで感じたことのない感覚に戸惑っていると、旭が顔を覗き込んできた。


「どした?」


旭の顔が近くて思わず仰け反ると、バランスを崩して落ちそうになった。


「わっ!!」


慌ててバランスを取ろうと手摺りを掴むが、掴み損ねて身体が傾く。


あ、やばい……落ちる……!


ギュッと目を瞑ると、背中が何か暖かいものに包まれた気がして恐る恐る目を開けると、旭の腕の中にいることに気づく。


「おい!ったく、危ねぇな!」


耳元で旭の声がして、一気に顔に熱が集まるのを感じた。


「ご、ごめん……」


旭はため息をつくと腕から解放してくれた。
ドクンドクンと鼓動がうるさくて、うまく息が出来ない。


なんでこんなに動揺してるんだろう…。


「何だ、顔赤いぞ?こんな所にずっと居るから風邪でも引いたんじゃねぇか?」


そう言って僕の額に手を当てる旭の手を払い除けてしまった。


「なんでもないっ!もう帰ろう!」


「んだよ。人が心配してやったのに、変なやつだな。腹減ったし帰るかぁ」


旭は、僕の態度にムッとしていたが、すぐにいつも通りに戻ったのでホッとした。


それから家に着くまでの間、さっきの出来事を思い出しては触れられたところにまだ熱がある気がして、まともに顔を合わせられなかった僕を旭が怪訝そうな顔で見ていた。