魔術師ってことは魔女のお母様の手がかりを何か知っているかもしれない。

「確か、名前はイルゼといったはずだ」
「イルゼ、さん……」

 聞いたことのない名前だった。
 殿下はソファに腰かけると、足を組んで考え込んだ。

 そうして顔をあげると、私にこう告げた。

「イルゼはミレーヌ様の弟子だったはずだ」

 殿下と話をしているうちにいつの間にか王都を抜けていた──。