ー「今までありがとうございました。」
 この言葉に、どんな意味が詰まっているか、きっとお兄さんは知らないだろう。でも、それでいい。お兄さんが幸せになってくれれば、それでいいんだ。そう、自分の気持ちに蓋をしながら伝えた。
これが私にとっての精一杯の告白だから。

 お兄さんは、大きく目を開き、
 「どういたしまして。」と、いつもの何倍もの笑顔で返してくれた。

 この笑顔を、彼女さんはいつも見ているのかな。いや、何十倍も素敵なのかもしれない。
 あの一瞬であんなにかっこよかったんだ。きっともっと素敵で、彼女さんはそれを沢山受け取れる。すごく幸せなんだろうな。
 これ以上考えたくない。辛くなるだけだと思いながらも、彼のせいで考えてしまう。本当に馬鹿だ。

 フラペチーノを受け取って、カフェから出ると、一気に閉じ込めた感情が溢れ出してきた。
 好きだと伝えられなかった。という後悔と
 もう、恋なんてしたくない。というひねくれた考え。冷たい風が足に当たって痛くて、でも今の私には丁度良かった。