無数の蝉の声が響いている道、決して嫌いとは言えないお線香の匂いに誘われてみたりもして、ぼーっと遠くを眺める、そんな毎日が続く。落ち着く日々ではあったが、じわじわと湧いてくる汗が心地悪いことに変わりはなかった。

 私はどこにでもいる一つ結びの物静かな少女であった。同時に日和、ひよりという名前に似つかわしくない、素直というものを知らない、どこかまだ未熟な少女だった。勉強もそこそこしかできない上に運動神経も決して良いとは言えない。だが、秀才になりたいとも、皆から慕われるような存在になりたいと思った事も無かった。

 当時、高校二年生ながらに、現状維持を求める、やけに大人びた性格であったと思う。学校も特別楽しくはなかった。というものの、私のこの性格が災いしたのか、私には友達がいなかったし、尊敬出来るような教師もいなかった。けれど無理して友達を作ろうと思わなかった。

 働きに出ているが故、家に両親がいることが少ない上に放課後に暇を潰す相手もいないため、学校が終わっても、日が暮れるまで教室の窓から景色を眺めるのが日課だった。