それに、ピアノのこともよくわかってる。
律は、繊細でやさしい音色を奏でるかと思えば、グルーヴィングしたノリのいい音でその場の人を巻き込むような演奏もする。

でも、ピアノは単なる趣味で、ピアニストになろうとは思っていないんだって。
お父さんと同じ外科医を目指すらしい。

「俺のピアノは技巧だけで、プロになれるほどの感性は無い。だけど、おまえにはそれがある。技術は訓練すれば身に着くけど、感性は生まれもってのもの。神様からのギフトなんだよ」
律にそんな風に言われるとうれしかった。絶対お世辞とか言うヤツじゃないから。
「早く根性決めろよ。手遅れにならないうちにな」