「っ!?」
ジョッキを持っていた腕を突然誰かに掴まれ、強引に口元から離される。
フラフラとする感覚の中、瞑っていた目をゆっくりとあけると、一之瀬さんの顔が朧気な視界に映りこんだ。
「ど、して…」
体が熱い。立ってられない。久しぶりに飲んだけど、私ってこんなにアルコールに弱いんだっけ…。
「山下さん、大丈夫ですか?一旦外に出てきますので、皆さんは続きをしていてください」
上手く立てない私を優しく腕で支えながら、ざわざわしている居酒屋から一ノ瀬さんは私を外へと連れ出した。
ひんやりとした風が火照った体を心地よく撫でる。
外にあった待合の椅子に私を座らせた一ノ瀬さんは、軽いため息をつきながら私の前にしゃがみこむと、わしゃわしゃと髪の毛をかいた。
「何してんだろ、おれ」
どういう意味で言ったのか分からなかったけれど、乱れた前髪の隙間から覗いた一ノ瀬さんの目と視線が絡まり、思わずドキッとする。
「すみません…迷惑かけて」
「本当ですよ、倒れたらどうするつもりだったんですか」
少し怒った声色。だけど、優しくて心地のいい声色。
「ありがとうございます…」
そう言葉を紡いだとたん、急な眠気が襲いかかってきて目を閉じそうになる。
「山下さんはもっと自分を大事にした方がいいですよ。1人で泣くとか、人のために無理するとか、嘘をつくとか、そんな事はもうやめてください」
夢の中なのか、現実なのか、定かではない状態の中で聞こえてきた優しい言葉に目頭が熱くなった。心がポカポカして、嬉しくて、私はそのまま意識を手放してしまった。
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