「え〜山下さん大変ですね〜?あまりご無理なさらず〜!」


そこでようやく神崎さんと目が合った。まるで今私を認知したみたいに。


「じゃあ行きましょ?一之瀬さん!案内しますよ〜」


神崎さんの細長く綺麗な指が一之瀬さんの腕に触れる。自然なボディータッチ。やっぱり眩しいふたりだ。

頭をぺこりと下げようと一之瀬さんを一瞥したとき、徐に視線が絡まった。


一之瀬さん……?

なんとも言えない表情を浮かべて私を見つめている。私なんかよりも神崎さんのがいいはずでしょ?


「はい」


感情の読み取れない一之瀬さんの静かな声を最後に、エレベーターの扉はしまった。


「これでいいんだ、私なんか」


久しぶりの誰かと食べるお昼の夢は、呆気なく消え去った。


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