優しい愛で溶かされて



「山下さん、案内ありがとうございました。すごく広いんですね、この会社」

「いえいえっ、そうですね本当に」


一之瀬さんの圧のない穏やかな雰囲気はとても喋りやすい。一緒にいてここまで楽だと思えた会社の人間は初めてだ。


「もうお昼休憩ですよね?もしよかったら食堂で一緒に食べてくれませんか?山下さんがいて下さったら心強いです」

「えっ!あ、はい!」


誰かに一緒にご飯を食べようだなんて誘われたのが久しぶりすぎて、つい声が上ずってしまった。なんだか心がポカポカする。嬉しいな。


食堂に向かおうとエレベーターに乗り込んだ矢先、「すみませ〜ん!」と可愛らしい声が背後から響いた。


「私も乗ります〜!」


今朝聞いた声よりもワントーン高い声。
私と一之瀬さんの間を遮るようにエレベーターに乗り込んだ神崎さんによってエレベーターに甘い香りが漂った。


「会社案内されてたんですか?この会社広いし疲れたんじゃないですか?」


「はい、いい運動になりました」


「あはは、朝から運動お疲れ様です〜!」



なんだろう、この一気に感じる疎外感は……。
まるで私がいないみたいに繰り広げられる会話。神崎さんなんて思いっきり私に背を向けてるし。