優しい愛で溶かされて


なにか、何か言わなきゃ気まずすぎる…!

そう思い必死に頭を回転させるけれど、適当な言葉は何ひとつとして浮かんでこない。

そんなアワアワしている私をなだめるかのように、一之瀬さんは穏やかに口を開いた。


「どうせ僕はもう山下さんの泣いてるとこ見てて知ってるわけだし、僕の前では喜楽でいてくださいよ」


その言葉にゆっくりと顔をあげると、優しく微笑む一之瀬さんと目があった。やっぱりこの人はいい人だ。優しくてイケメンで、きっと誰からも愛される人。


____『ドアが開きます。』


単調な音声が響き、エレベーターのドアが開かれる。ようやく2人っきりの気まずすぎる空間が終わってほっと安堵のため息を漏らす。


エレベーターを降りてからの社内案内は何事もなく順調に進んだ。一之瀬さんは人前で私が泣いた話をすることもなく、まるで今日初めて会いました〜みたいな他人行儀な感じで接してきた。


どうせなら、と関わりのある部署には顔を出して挨拶をしていたこともあってか、社内案内を終える頃にはもうお昼休憩に差し掛かりつつあった。