そういえば……。
旦那様におやすみなさいと言ったのは初めてかもしれない。
なんて気を紛らわすように別のことを考えながら自分の部屋に戻って行った。
***
優しい光が襖の隙間から漏れ出る朝。
私はその優しい光で目が覚めた。
「……ふわぁ……なんか、昨日すごい夢見たような……」
まだ眠気の残る頭の中でぼんやりと昨日の不思議な“夢”のことを考えていた。
旦那様がオオカミ男で、私の名前を呼んで……。夢とは言い難いリアルな夢だった。
「……着替えよ」
しばらくぼーっとした後着替えるために立ち上がる。
タンスの中から着物を引っ張り出していると。
「雅。起きてるか?」
「……だ、旦那様!?」
朝から聞こえるはずもない旦那様の声が聞こえてきて。
私は素っ頓狂な声を出してしまった。
慌てて襖を開けるといつもの旦那様が廊下に立っていた。



