【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


これでもかと心臓が騒がしくなる。


私の知っている知識としてはその大きな獣耳、しっぽはどこからどう見てもオオカミ。そして旦那様は人間の血を引くもの。


それが合わさったというならば……“オオカミ男”しかないだろう。



「……正解だ。オオカミの血が少し混ざっている。そのせいでオオカミの能力、姿が滲み出ているんだ」



旦那様を見つめていると、私を見てにやりと笑う。



「……私が、怖いか?」


「え?」


「この姿の私は、怖い……か?」



光り輝く旦那様の周りとは違って顔は強ばっており、少し怯えているように見えた。


その事に、昼間聞かれた質問を思い出す。



「……緊張しますけど……。怖くは無いです。美しいですよ」



おそらく普通の人ならここで“怖い”と答えるのだろう。


だけど私にはその姿が美しく見えた。


いつもの旦那様以上に、美しく輝いていた。怖いと感じることはなくなって。