「……なんだ、お前か」
怖くて頭を下げたままにしていると聞き覚えのある声に頭をあげる。
「……だ、んな様……?なんで……」
「あー、見られてしまったか。お前には気づかれたくなかったんだが……」
目を見開いて驚く私をよそに困ったような声を出す旦那様。
そう。“なにか”は何故か獣耳をつけた旦那様だった。何が起こっているのか分からないこの状況についていけない。
情報量が多くて頭が働かない。
「そ、それは……」
「ああ、これか?これは……オオカミ特有の耳と尾だ。満月の日はどうしても能力が抑えきれなくてな。こうして出てしまうんだ」
戸惑う私と違って旦那様は躊躇いもなくスラスラと説明をする。
その事にあんぐり、と口を開けて見つめる私はどうしたらいいのだろう。
「……旦那様。失礼を承知でお聞きしますが……」
「なんだ?かまわん、言ってみろ」
「もしかして、“オオカミ男”……ですか?」



