薄暗くてよく分からなかったけど人間の体になにか大きな獣耳がついているのが見えた。さらに後ろには大きなしっぽまで。
「……ワォーン……」
「おお、かみ……?」
じっと“なにか”を見ていたら突然ほえ出した。オオカミのような遠吠えが聞こえる。
ハッとして顔を上げて空を見る。
遠吠えを聞いてまさかと思って空を見ると今日は満月だった。
この現実離れした光景に驚きを隠せなかったけど突っかけに足を入れ、少しづつ、少しづつ近づいた。
怖いという気持ちがあるけど美しい佇まいから何故か旦那様を思い浮かべてしまった。
失礼なことを考えているとわかっている。
だけど……。
「……誰だ!!」
「ひっ、も、申し訳、ありません……!」
足音立てず、息を殺して近づいたはずなのに。数歩歩いたところであっけなく気づかれてしまった。
恐ろしい声に、反射的に謝ってしまう。



