【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


***

「疲れた……」



夜が深け、みなが寝静まる頃。


ようやく私の稽古が終わり、部屋へ戻る。久しぶりの稽古は大変で、ずっと踊りっぱなしだった。


そのせいで足は棒のように動かない。


部屋に戻った瞬間倒れ込んでしまった。



「はぁ……もう、このまま寝ちゃおう……」



すっかり疲れ切ってしまった私は、お風呂に入ることもせず、そうそうに寝ることにした。


今回は旦那様も稽古場にいたので、緊張がずっと解けなかった。


私の踊りを見てどうと思ったのだろう。


私の踊りには治癒能力があると信じているのだろうか。


そんな思いが邪魔をして、いつもより上手く踊れなかった。足はもつれ、歌う声は小さくなり、扇子の向きを間違える。


いつもはしない間違いをここぞとばかりに発揮してしまい、師匠からは散々怒られた。


そんな様子をどう思いながら見ていたのか。旦那様のことが気が気ではなかった。