【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


「これくらいはしてもいいだろう?」


「で、ですが……」



最近は旦那様に振り回されっぱなしの私。


色んな意味で刺激が強すぎて今にも失神しそうだった。おかげで涙も引っ込んだ。



「それより、こんな約束をするのはどうだ?」


「……約束?」


「そうだ。もし、お前が婚約破棄を破棄するならば、20歳になる日に、お前から口づけを交わしに来い」


「そ、そんなこと!」


「簡単なことだ。ただ私に口を近づけるだけだ。たまには私のわがまま、聞いてもらっても良いだろう?」



にやり、と意地悪く笑う旦那様。


オロオロと慌てているのは私だけで、この状況を楽しんでいる様子。


じ、自分から口づけを交わしにいくなんて……。そんなこと、出来るわけ……。



「約束だからな。それまでの期間、嫌という程お前に愛を与える。悪くないだろう?」



私が断らないと確信を持っているのか、断る隙を無くしてくる。