【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


現に私も美しいと思っているし、一瞬でもこの御方の妻になれたことを誇りに思っている。


だけど……。


婚約破棄を申し出たのは、自分勝手な理由があるから。


そんな理由を持っている私が心美しいなんて言われて……。



「……なんで、お前は泣いているんだ?私が、なんかしてしまったか?」


「ち、ちがっ……違うんです……」



旦那様にそう言われるまで気づかなかった。知らぬうちに、涙が溢れていて、一筋の涙が頬を伝う。


旦那様はそんな私を見て驚いていた。


まさか私が泣くなんて思ってもいなかったのだろう。



「やはりお前は美しいな。涙を流す姿も綺麗だ」


「そ、そんなことはっ……」



そっと微笑みながら、私の涙を人差し指ですくい上げる旦那様。


綺麗な指に私の涙が持ち上がると、その雫を口元へ持っていく。



「だ、旦那様!?」



ちゅ、という軽い音が響くのと同時に、旦那様の妖艶な笑みがそこにはあった。