【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


離婚を受け入れてもらうには、ちょっとした要望も受け入れておかなければ。



「……お前は、それでいいのか?」


「へ?」



旦那様の言葉に頷いたあと、何かを呟いていた。


声が小さすぎて上手く聞き取れなかったけど……。なんで、旦那様はそんな険しい表情をしているのだろう。



「……旦那様?」


「お前は、私のこと、怖いと思っているのか?」


「……っ、きゃ!」



旦那様をじっと見ていると、突然私を抱きしめる。


びっくりして思わず悲鳴をあげてしまった。


だけど、旦那様の腕の中は暖かくて心地よい。


ドキン、ドキン……という心臓が心地よいリズムを刻んでいた。