【短編】冷酷な旦那様が恋に落ちたのは、離婚を申し出た花嫁でした。


さすがに無視する訳にはいかないので、桜と向き合いそう返答した。


正直、旦那様とお話するのは未だに緊張する。あの日以来たまにこうして会話する程度までは仲は深まった。


だけど、何度話をしてもこの緊張感は抜けなくて。


早く、ここから立ち去りたいと思ってしまう自分がいた。



「そうか。なら良かった。今年は満開になるのが少し早いみたいだったが、とても綺麗だ」


「……っ、そ、そうなんですね」



私の声に反応した旦那様。


桜を見ながら、ふわりと微笑んでいた。


旦那様の笑顔を見るのなんて初めてで。息をすることを一瞬忘れた。


美しいなんて言葉だけじゃ足りないほど、そこには妖艶な空気がまとっていた。


ただ桜を眺めているだけなのに、こんなにも絵になる御方は他にいるのだろうか。



「……ところで、お前は今日暇か?」


「え?」



突然聞かれて固まる私。


どう返事をしようかと、目を泳がせる。