旦那様との初顔合わせ、離婚の申し出の日から数日たったある日。
私は、敷地内にある桜の木の下に足を運んでいた。
日が高く登り、春らしい暖かな天気。
ちょうど桜が満開になり、とても満開に咲き誇っていた。
「……綺麗……」
そっと手を伸ばし、桜の花びらをひとつ、つまむ。
ふわっとした優しい感触、桜の匂い。
そんな桜は、私の心を優しく包み込んでくれた。
「……見事に咲き誇ったな」
「っ、だ、旦那様!?」
桜に見とれていると、後ろから声が聞こえた。振り向くと、紺の着物を身にまとった旦那様が腕を組み、私を見ていた。
「この桜は、星龍家に代々受け継がれている大切な桜だ。……気に入ったか?」
少しづつ歩み寄る旦那様。
桜を見上げながら、私に語りかけるその姿を見るのはなんだか不思議な気持ちだ。
「……気に入りました。とても綺麗な桜ですね……」



