着物ははだけ、髪はボサボサ、おまけに顔は真っ赤に熱くなっている。


そんなみっともない姿を旦那様に見られたくなくて急いで部屋を飛び出た。


その間もどくどくと心臓が騒いでいて落ち着かない。


何も考えないように自分の部屋に戻ろうとしたけど無理だった。


旦那様のお顔が頭から離れないのだ。


あんなに美しい顔をした旦那様が私に迫った。その事実を受け入れるまでに時間はかかるだろう。


なんで私なんかに迫ったのだ?


なんで、私の体に……。


自分の部屋にようやくたどり着き、襖を開けて部屋にある姿見の前になだれ込む。


着直した着物を少し緩め、姿見に映る自分を見た。



「……あか、い……。やっぱり、夢じゃなかった……」



首元につけられたしるしを見ながら腰を抜かす私は、誰がどう見ても間抜けな顔をしている。


今日で終わると思っていた結婚生活。


……いや、終わらせようとしていたの間違いか。