歓迎会は一次会だけでは終わらず、メンバーのほとんどが二次会へ流れることになった。

そんな中、遼子さんは皆んなに引き留められながらも、見事なくらい軽やかな笑顔でそれをかわして帰って行ってしまった。

私はというと、席が近かったがために宍戸から半ば強引に、二次会へと引っ張られていった。お酒は嫌いではないものの、今日は家に帰って早く足を延ばしたい気分だった。けれど、これも社会人としてのお勤めの一環かと諦める。楽しそうな他の同期たちを横目に見ながら、私は大人しく飲んでいた。

「そろそろお開きにするか」

誰かの声をきっかけにして、皆んなそれぞれに帰り支度を始めたが、さらに三次会へ行こうと言い出す強者たちが現れた。

さすがにもうこれ以上は、と断る女子たちの方が圧倒的に少なかったのには驚いた。

せっかくの機会だから一緒に行こうと誘われはしたが、私は帰りたかった。

「もう今夜はかなり酔ってるので、ここで……」

「全然酔った顔していないよ。本当はまだ飲めるんじゃないの?」

酔っぱらった先輩たちからそんな風にからかわれたが、私は笑いながら否定した。

「そんなことないです、ただ顔に出ないだけなんです」

それは本当だ。もうだいぶ酔っているという自覚があった。人前で醜態をさらすわけにはいかないから、平気なふりをしているだけだ。

「どうぞ皆さんで楽しんで下さい」

私は頭を下げた。

「それじゃあ、またの機会にね」

そう言って先輩や同期たちは、信号が青に変わったばかりの横断歩道に向かって歩いて行った。

宍戸が心配そうに私の顔を覗き込む。

「送っていこうか?」

私は首を横に振った。

「大丈夫よ。タクシーで帰るしね。それよりもほら、皆んな待ってるよ?」

「おーい、宍戸!」

大声で名前を呼ばれて、宍戸は肩をすくめた。

「俺も帰りたいんだけどな……」

「気持ちは分かる。でも営業なら、特に先輩たちの誘いは断らない方が後々いいんじゃないの?」

宍戸はうんざりしたように顔をしかめる。

「まったく、今どき体育系の乗りはやめてほしいよ。……じゃ、気をつけて帰れよ。なんかあったらすぐ電話しろよ」

「はいはい。お疲れ様」

再び宍戸を呼ぶ声が聞こえた。

彼は気がかりそうな顔で私を見たが、観念したように先輩たちの方へと走って行った。

「宍戸っていい人」

私はふふっと笑いながら、同期の後ろ姿を見送った。