私は結局、歓迎会の後のハプニングをざっくりではあったが、遼子さんに話す羽目になった。しかも彼女の巧みな誘導尋問によって、気づいた時には一連の出来事のほとんどを白状させられていた。

「そんなことがあったのね……。それならなんだか納得」

彼女は笑みを浮かべながら、何度もうんうんと頷いていたが、ふとため息をつくとぽそっと言った。

「山中君がもっと素直になればいいんだろうけど……。あ、岡野さんはそのままで大丈夫だから」

遼子さんの言葉に首を傾げる私に、彼女はにっこりと笑った。

「二人がうまくいったらいいな、って」

「そんなのは……」

あり得ない――。

そう言おうとして、私ははっとした。

「……ちょっと待ってください。この話、私が補佐のことを好きだっていう前提ですか?気になっているとは言いましたけど、私、好きだとかそういうセリフはひと言も口にしていませんよね……?」

「え、だって」

何を今さら、とでも言いたげな顔で遼子さんは言う。

「違わないでしょ?私はもう最初から、そういうことなのかと思って話してたわよ。こういうことって、気になって仕方がない、イコール好きっていうことなんじゃないの?でも実は私、少し前から気づいていたのよ。岡野さんを近くで見ていたからかもしれないけど」

私は絶句した。

「それって……」

まさかとは思うが、他の人の目にもそう映っていたのだろうか。そんなはずはないと思いたい。明日からはもっと気をつけなければ、と私は改めて自分を戒めた。

遼子さんとの食事会から帰宅し部屋に上がった途端、疲れがどっと襲ってきて、私はベッドの上に大の字に寝転がった。遼子さんとの食事でこんなに緊張したのは、一番初めに誘ってもらった時以来だ。

私はのろのろと体を起こすと、湯船にお湯をため始めた。立ち上る湯気に頬を撫でられて、ほっとする。

蛇口からお湯が流れていく様をぼうっと眺めながら、私は彼女との会話を思い出してため息をついた。

ただ二人を見守るだけよ――。

遼子さんはそう言っていたけれど、それはそれで明日からやりにくくなりそうだ。