「じゃ、俺帰るわ。もうこんなことすんなよ。おつかれ、おと」

沈黙に耐えきれず、立ち上がる。思ったよりも乱暴になってしまった椅子の扱い。

…あーやっぱ、凹んでんな。

君の顔なんて見れないまま、片手を振って、教室をあとにする。

「…は、きっつ」

自嘲気味に漏れた声。

緊張気味に、震えた指先。潤んだ目、淡く染まった頬。鈴のような柔らかい声に乗せられた、好きの2文字。

君は嘘をつくときすら、美しい。

嘘でも、そんなに緊張してくれていたなんて幸せだ。

なんて、負け惜しみになるだろうか。

負け惜しみでもいいか。悔しいくらい、君が好きだ。