翌日、4月1日。
 私はまるで今から戦いに行くかのように張り切っていた。

 そう、私は今日、麗央くんに初めて想いを伝える。

 正直、受け入れてもらえるかはわからない。
 でも、伝えなきゃ。
 麗央くんとこれからも一緒にいるためには、きちんと伝えなくちゃ、ね。

 私は自習室で一人、麗央くんを待っていた。
 なかなか姿を現さない麗央くんを待ちながら、落ち着かなくてメールの文面を繰り返しみる。
 そこにはつい先ほどの会話があった。

『花江:自習室で待ってます。話があります。来てください』
『麗央:わかった』

 麗央くんらしい絵文字もスタンプもないシンプルな文面。
 私は麗央くんが来てくれると信じて待ち続けた。

「お待たせ」

 いつもと変わらない声が聞こえた時は、思わず弾んだ声を出してしまった。
「麗央くん…!」
「花江、急に呼び出してどうしたんだよ」
 麗央くんは少し心配そうに言った。
「うん、そうだよね…忙しい中で急に呼び出してごめんなさい」
 私は慌て謝った。
「ああ…別にいいけどさ」
 麗央くんはそっけなく答えた。
「で、話って何?」
 私はドキンと胸が高鳴るのを感じた。
「えっとね、麗央くん…」
 私は言葉に詰まりながら言う。

「今日って、エイプリルフールだよね」

 私が言うと、麗央くんは意外そうに首を傾げた。
 「それがどうした」とでも言っているかのように。

 私は大きく息を吸った。

「私、麗央くんが大嫌い!」

 言っちゃった。
 大嫌い。
 これが私の、精一杯の愛の告白。
 エイプリルフールに頼っちゃったけど、ちゃんと言えた。
 私は確かな興奮を胸に抱いていた。

「それって、俺が好きってこと?」

 私が言っても一切動じず、至ってクールに麗央くんは言う。
「う、うん」
「知ってる」
 な、なんなの…⁈
 私は勇気を出して言ったっていうのに……。

「……俺も」
「えっ」

 思わぬ返答に声が漏れる。

「ずっと前から好きだった」

 そう言う麗央くんの頬は、ほんのりピンク色になっていた。

「お前、鈍感すぎんだよ。天然なのが余計に……抑えられなくなる」
「……っ」

 聞いてるこっちまで恥ずかしくなってくる。
 でもーーーー嬉しい。

「ずっと可愛いがりたかった。でも引かれると思ったから……」
「……そんなことないっ!」

 思わず声を上げていた。

「嫌いになるなんて…そんなことないよ!私は麗央くんのこと大好きだし……」

 わ……勢いで〝好き〟って言っちゃった……っ

「……可愛がってくれたら、嬉しいよ……」

 麗央くんが息を呑むのがわかった。
 ……突然こんなこと言ったから、きっとびっくりしちゃったよね……。
 私は不安になって麗央くんの顔を見た。

 ……りんごよりも真っ赤だった。

「……ヤバい。もう抑え切れない」
「えっ?ちょっ……」

 私の声は、麗央くんに遮られてしまった。

 ……なぜなら私は、麗央くんに口を塞がれてしまったから。

 え。
 ちょっと待って!

「れ、麗央くん……⁈」 
「花江、もう俺我慢すんのやめたから」
「え…それってどういう…⁈」

 私が言いかけた時、麗央くんにまた口を塞がれてしまった。