3月が終わろうとしていた。
 あれから私と麗央くんは、あまり喋っていない。
 目があっても、すぐに逸らされてしまう。

 私は何か悪いことをしたみたいだ。
 麗央くんはここ数日、視線すら合わせてくれない。

 3月31日の朝。
 私はベットに座り込んだままふと棚の上のカレンダーを見た。

 明日、4月1日。
 そう、エイプリルフール。
 一年に一度だけ、嘘をつける特別な日。

 去年は何したっけ。
 去年は…確か親友の莉花(りか)ちゃんと嘘をつきあって笑ったっけ。
 莉花ちゃん、今頃何してるかなぁ。
 きっと彼氏の山岡くんと仲良くやってるんだろうな。

 莉花ちゃんは、私とは違う。
 莉花ちゃんは可愛くて、頭が良くて、おまけに気配りもできる。
 だからモテていた山岡くんにも臆せずに好きだと告白して見事カップル成立した。

 …私と違って。

 私はなかなか告白する勇気が持てず、告白は莉花ちゃんに手伝ってもらった。
 結局自分の口で直接「好き」と伝えることができず、麗央くんと付き合えたのだって莉花ちゃんのおかげだ。

 それに私は、可愛くない。
 頭がいいわけでもないし、優しくもない。
 そんな自分が、麗央くんに釣り合うわけがない。

 …こんな私よりも、莉花ちゃんの方が麗央くんに相応しかった。

 莉花ちゃんは完璧で本当にいい子だ。

 本当は麗央くんは私のことなんてーーーー

 そこまで考えて、我に帰る。

 そんなわけ、ない。

 確かに私は可愛くないし、頭も良くない。
 気の利いた気遣いもできない。でもーーーー

 ーーーー麗央くんが好きと言ってくれた私は、きっと嘘じゃないから。

 だから私は、伝えたい。

 カレンダーを見つめる。
 明日ならきっと、言えるはず。