賢人に唇を重ねようとした時、彼の携帯が鳴った。

「親父?

今?家にいるけど。

ああ、美冬もいる。

こっち向かってる?

分かったよ。

気を付けてな」

「美冬」

賢人の方から、軽く口づけをされた。

「イチャイチャは後でな?

親父が来るって。

俺たちに渡したいものがあるらしい」


今日は思いきりイチャイチャする気でいたのに。

「2人で住めば、飽きるまでイチャイチャし放題だよ?

もう少しの我慢。

ね?

可愛い美冬なら、分かってくれるよね」

「もう。
何か、秋山くんとか麗眞くん辺りが言いそうな台詞よ、それ」

「本当のことなんだから、いいじゃん」

そんな中、インターホンが鳴り響いた。

賢人のお父さんが来るなんて、聞いてなかった。

賢人のお父さん、小野寺 賢一(おのでら けんいち)さん。

有名なテレビ番組のカメラマンで、しょっちゅうロケに出かけ、1ヶ月家に帰らないこともある。

帰ること自体がレアなのだ。



賢一さんが来るって知ってたら、ブルーのデニムパンツに黒のオフショルニットなんて格好、して来なかったのに。