「いらっしゃいませ~」

 私がよく行くコンビニがある――。

 そこの店員の一人に吸血鬼の男性がいる。

「いらっしゃいましちゃった。こんばんは」

「月ちゃん、こんばんは~」

 雪が舞い散る冬になっても、何も変わらない。
 コンビニ吸血鬼は今日もコンビニで働いている。

 マフラーにコート。
 さむーい! から一気に、あったか~い! ってなった。
 濡れた床で滑らないように、雑誌コーナーへ進む。

「あ、偶然。また焼き芋買いに来たの?」

 尾瀬君が、綺麗な薄い水色のマフラーをして店に入ってきた。
 まだ制服だぁ。
 バイトだったのかな。
 
「尾瀬君! うん。だって焼き芋美味しいもんね~尾瀬君も焼き芋? あ、新作のチョコ買いに?」

「あーう、うん」

 この前、話をした『生チョコ・スイートキス』が発売される日だもんね!
 私もそれを買いに来た! あと肉まん! そして焼き芋!

「えー! 尾瀬君、甘いもの嫌いだって言ってたじゃん!!」

 私達の会話に、品出しをしていたレイちゃんが割り込んできた。

「え! 尾瀬君は甘いもの大好きだよ??」

「うそぉ! クリスマスケーキのオススメしたら、ケーキとか甘いもの嫌いだって言ってたよぉ!」

「そ、それは……」

 あれからレイちゃんは、尾瀬君とお友達? になれたらしい。
 私もたまに話をするようになった。

 何も変わらないって言ったけど、やっぱり何か変わってく。

 春夏秋冬、季節みたいに、私もみんなも少しずつ変わっていくんだな。

 でも吸血鬼は変わらないの?

 いつものように優しい微笑みで、私達を見守ってくれている。

 彼に奥さんがいたってわかってても、やっぱり好きだな。
 
 運命は、まだわからない。

 私が吸血鬼と出逢えたのだって奇跡だもん。

 この奇跡を大事にしたい。

 これから私がもっと素敵な女性になれたら、彼とコンビになれるかもしれないよ。

「ありがとうございました、またお越しくださいませ~」

「はーいっ。また来ます!」
 
 春夏秋冬、私の青春はまだまだ続く。
 

 ~私とコンビニ吸血鬼・完~