「五十嵐､､､」

黒田先輩は表情を変えず、じっとこちらに目をやる。

もう夕暮れ時でオレンジの光が私たちの方に差しこんでいた。

彼の生徒会長だけがつけることを許されているネクタイピンが光を反射させる。

あんまり見られると、恥ずかしい。

やっと私から目を逸らしたと思ったら、いったん持っていたプリントを置いて口を開いた。

「総長とか危なそうだからあまりそんな話しないほうがいいんじゃないかな」

何か知っていそうだ。

根拠はないが、なんとなくそんな気がした。

知らないふりして秘密にされると余計に知りたくなる。

椅子を少し前へ引いて体を彼に近づける。

「五十嵐って人はこの学校でトップだって聞きました。」

黒田先輩は相変わらずこの話に乗り気でないようで仕事の続きをしている。

「何か知っているんじゃないですか？」